『私が、生きる肌』 『捜査官X』 『ミッドナイトFM』 試写
本日は試写を3本。
『私が、生きる肌』 ペドロ・アルモドバル
『抱擁のかけら』(09)につづくアルモドバルの新作。『セクシリア』(82)でデビューし、初期アルモドバル作品の常連だったアントニオ・バンデラスが『アタメ』(89)以来、久しぶりに出演しているのもみどころ。
アルモドバルが好む状況や表現がこれでもかといわんばかりに詰め込まれ、濃密な空間を作り上げているが、まずはなんといっても“肌”に対するアプローチが素晴しい。本来なら肌の問題だけではすまない状況でありながら、それを「自己と他者を隔てる境界」としての肌に実に巧みに引き寄せ、独自の世界を切り拓いている。詳しいことはいずれまた。
『捜査官X』 ピーター・チャン
ピーター・チャンは、ラブストーリーであれホラーであれアクションであれ、土台になる人間ドラマやキャラクターの造形がしっかりしているので非常に安定感があり、大きくはずすことがない。
この新作は、ずばり中国版『ヒストリー・オブ・バイオレンス』。山奥ののどかな村で、両替商に押し入った指名手配中のふたりの犯罪者が、その場に居合わせた平凡な紙職人ジンシーと揉み合ううちに絶命する。そのジンシーには、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセンのような秘密がある。
違いは、天才捜査官がその謎を解いていくところ。
『ミッドナイトFM』 キム・サンマン
ラジオの人気女性DJと冷酷な殺人鬼の息詰まる駆け引きを描いたスリラー。ヒロインを翻弄し、執拗に追い詰めていくサイコパスに扮するユ・ジテは、ちょっと『オールド・ボーイ』にかぶる。
ヒロインにつきまとうマ・ドンソクのオタク男が意外性を発揮するところがいいアクセントになっている。ハイテンションで押しまくるよりも、もっとこういうキャラを生かしたほうがめりはりが出ると思うが…。
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