『危険なメソッド』 試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『危険なメソッド』 デヴィッド・クローネンバーグ

デヴィッド・クローネンバーグ最新作。ユングをマイケル・ファスベンダー、フロイトをヴィゴ・モーテンセン、そしてふたりを結びつけるザビーナ・シュピールラインをキーラ・ナイトレイが演じる。

映画のなかでザビーナという人物が放つ独特のオーラに魅了された。実際にそういう人物であったのか、原作のノンフィクション『A Most Dangerous Method: The Story of Jung, Freud, and Sabina Spielrein』を書いたジョン・カーの慧眼なのか、それをもとに戯曲を書き、この映画のために自ら戯曲の脚色を手がけたクリストファー・ハンプトン(『つぐない』)の想像力なのか、クローネンバーグの鋭い直観なのか、あるいはそのすべてなのか定かではないが、とにかく非常に興味深い。

ザビーナがオーラを放つのは必ずしもトラウマのせいではないだろう。映画のなかに、フロイトが彼女に対して、自分たちはユダヤ人であり、アーリア人(ユングのこと)に深入りすべきではないというような表現で忠告する場面がある。


しかし、ユダヤ人とはいってもフロイトとザビーナはまったく違う。ユダヤの文化や伝統をそのまま受け入れるのではなく、それらと独特の交わり方をしているユダヤ人の女性が、大胆な行動に出たり、斬新なヴィジョンを切り拓くことがある。

ハンナ・アレントとか、映画の世界でいえば女性監督のサリー・ポッター。ポッターには2度インタビューしたことがあるが、独特の感性や世界観を持っていて、それが『オルランド』や『タンゴ・レッスン』、『愛をつづる詩』のヒロインたちに反映されている。『危険なメソッド』のザビーナの存在感は、彼女たちに通じるものがある。

《関連リンク》
サリー・ポッター・インタビュー02 『愛をつづる詩』
(ユダヤ文化については『タンゴ・レッスン』公開時の1度目のインタビューで語っているのだが、まだ整理していないので、いずれアップしたい)