スペインの新鋭ロドリゴ・コルテス監督にインタビューする
まやかしの世界に揺さぶりをかけ、隠れているものを炙り出す
2013年2月15日(金)公開予定の『レッド・ライト』のプロモーションのために来日したロドリゴ・コルテス監督にインタビューしてきた。
彼は1973年、スペインのガリシア生まれ。『レッド・ライト』は、2010年に公開された『[リミット]』につづく監督最新作。キャストは、キリアン・マーフィー、シガーニー・ウィーバー、ロバート・デ・ニーロ、etc。内容は予告編から想像していただければと思う。
『[リミット]』がワン・シチュエーションのスリラーで、新作が超能力となると、『SAW』シリーズや『パラノーマル・アクティビティ』方面のトレンドと結びつけられてしまいそうだが、それは大きな間違いだ。
コルテス監督の世界を明確にするためには、『[リミット]』と『レッド・ライト』を分けて考えたほうがいい。『[リミット]』でもコルテスの感性や表現力は発揮されているが、そこにはクリス・スパーリングの脚本という土台があった。『レッド・ライト』は、コルテスのオリジナル脚本で、脚本自体は『[リミット]』以前に完成していた。
そこで、『[リミット]』に先立つコルテスの長編デビュー作『Concursante』(07)をチェックし、『レッド・ライト』と繋げてみると、この監督の世界がだいぶ明確になるだろう。
『Concursante』は、経済史を教える若い教授が、TVショーで史上最高額に値する商品(豪邸、車、ヨット、飛行機など)を獲得し、億万長者になるが、その財産を維持するために金が必要になり、バラ色の生活があれよあれよという間に悪夢に変わっていくという物語。ワイルダーの『サンセット大通り』と同じように、そんな主人公の死から物語が始まり、彼の回想によって皮肉な運命が描き出されていく。
コルテスは『Concursante』でも『レッド・ライト』でも、「経済」や「超能力」そのものに関心を持っているわけではない。それらを切り口としてまやかしの世界に揺さぶりをかけ、あるいはまやかしを仕掛けたりそれに操られる人間に迫り、背後に隠れているものを炙り出そうとする。
そういう意味では『パブリック・アクセス』や『ユージュアル・サスペクツ』など初期のブライアン・シンガーに通じるところもあるといえる(ブライアン・シンガー・インタビュー参照)。
実際に会ったコルテス監督は頭の回転が速く、きっちりとした答えがすぐに返ってくるので時間にロスがなく、予備の質問もすべて聞けてしまった。非常に刺激的で面白いインタビューだった。記事は月刊「宝島」に掲載予定だが、まだ少し先なのであらためて告知することに。