『グレート・ビューティー/追憶のローマ』 劇場用パンフレット
永遠と喪失の狭間で
2014年8月23日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国ロードショーになるパオロ・ソレンティーノ監督の新作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』の劇場用パンフレットに、上記のようなタイトルで作品評を書いています。第86回アカデミー賞で最優秀外国語映画賞に輝いた作品です。主演は、ソレンティーノ監督と4度目のコラボレーションになる名優トニ・セルヴィッロ。
ローマという舞台、“俗物の王”を目指しながら虚しさにとらわれる主人公ジェップのキャラクターなどから、ソレンティーノとセルヴィッロのコラボレーションをフェリーニとマストロヤンニのそれに重ねてみる向きもあるかと思いますが、筆者はそういうところはあまり意識しないほうがよいかと思います。というよりも個人的には、そうしたことを意識する以前に独自の世界に引き込まれていました。
この映画では、セリーヌの引用やフローベールへの言及、毎日セルフポートレートを撮り続ける男のインスタレーション、キリンを消し去るマジックショー、レンタル契約で高貴な身分を演じる没落貴族、たびたび姿を見せる修道女たちなど、その場では特に意味があるようには思えない多様な要素が、最終的にひとつにまとめあげられ、奥深い世界を切り拓いています。
さらにパンフレットの原稿では、『愛の果てへの旅』、『家族の友人』、『イル・ディーヴォ‐魔王と呼ばれた男‐』、『きっと ここが帰る場所』など、ソレンティーノの過去作品にも触れ、監督論的な視点も盛り込んでいます。劇場で作品をご覧になりましたら、ぜひパンフレットもお読みください。