今週末公開オススメ映画リスト2011/03/10+α

週刊オススメ映画リスト

今回は『ランナウェイズ』の1本です。おまけとして『台北の朝、僕は恋をする』の短いコメントをつけました。

『ランナウェイズ』 フローリア・シジスモンディ

70年代に一世を風靡し、来日もしたガールズバンド“ランナウェイズ”を題材にした作品。バンドのヴォーカルだったシェリー・カーリーの自伝『Neon Angel : The Cherie Currie Story』が原作。詳しいことは『ランナウェイズ』レビューをお読みください。

以下はおまけのコメントです。

『台北の朝、僕は恋をする』 アーヴィン・チェン

アメリカで生まれ育った(北カリフォルニアの郊外育ちとのこと)中国系の監督アーヴィン・チェンが、台北の街をどう描くのかがひとつの見所だろう。

これは映画ではなく小説の話だが、筆者がすぐに思い出すのは、2009年のエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)の最優秀処女長編賞を受賞したフランシー・リンの『台北の夜』のこと。アメリカで生まれ育ったこの二世の女性作家は、台北の裏社会から台湾の現代史にも視野を広げ、アイデンティティの揺らぎや葛藤を描き出していた。

それに対してこの映画のチェン監督の視点は非常に曖昧だ。主人公は異邦人ではなく地元の若者であり、恋人を追ってパリに旅立とうと考えているが、一夜の様々な出来事のなかで台北に暮らす意味を見出していく。

地元の若者が、当たり前にそこにあり、慣れ親しんだ世界を再発見することと、アメリカで生まれ育った監督が発見する台北のイメージには当然ズレがある。それが修正されていないので、虚構性とリアルな空気のバランスが崩れてしまい、どうしても半端な印象を受ける。