今週末公開オススメ映画リスト2011/04/28+α
今回は『四つのいのち』、『キッズ・オールライト』、『生き残るための3つの取引』の3本です。
おまけとして『ミスター・ノーバディ』と『ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男』の短いコメントをつけました。
『四つのいのち』 ミケランジェロ・フランマルティーノ
舞台は南イタリア、カラブリア州の山深い地域。この監督のスタイルは非常にユニークだ。フィクションが散りばめられているのに、いつの間にかフィールド・ワークに基づくドキュメンタリーを観ているような錯覚におちいり、静謐な映像世界に引き込まれている。「CDジャーナル」2011年5月号にこの作品のレビューを書いています。
ちなみに監督はプレスのインタビューでこんな発言をしている。「カメラを気にしない動物たちは、フィクションとドキュメンタリーの垣根を越えたいという、私が映画を作るときにいつも抱いている願望を果たさせてくれました」
『キッズ・オールライト』 リサ・チョロデンコ
『ハイ・アート』、『しあわせの法則』のチョロデンコ監督の新作。レズビアンのママたちが新しい家族のかたちを築こうとして、古い(というよりも実は存在もしていなかった)家族のかたちをなぞっているところが皮肉で可笑しい。「キネマ旬報」2011年5月上旬号で、家族のかたちと政治の結びつきに触れつつ、長めの作品評を書いています。
『生き残るための3つの取引』 リュ・スンワン
犯人捏造から巻き起こる負のスパイラルがサスペンスとダイナミズムを生み出す。軍事主義を基盤としたホモソーシャルな連帯が社会や価値観の変化のなかで崩れていくことを示唆しているようにも見える。
以下はおまけのコメントです。
『ミスター・ノーバディ』 ジャコ・ヴァン・ドルマル
『トト・ザ・ヒーロー』、『八日目』のドルマル監督、13年ぶりの大作。冒頭で取り上げた『四つのいのち』は、南イタリアの限定された地域を舞台に、物語が人間中心主義から脱却して、独自のアニミズムの世界が切り拓かれる。この作品は、2092年の未来、不死の世界、宇宙旅行へとヴィジョンはどこまでも広がっていくが、結局、人間しか見ていない。
『ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男』 ラッセ・ハルストレム
リチャード・ギア、アルフレッド・モリナ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ホープ・デイヴィス、ジュリー・デルピー、スタンリー・トゥッチという豪華なキャスト。ハワード・ヒューズとリチャード・ニクソンがリンクしていく物語は、アメリカ社会や政治に関心のある監督であればスリリングなドラマになったはずだが、残念ながらハルストレムのアプローチや演出にはそんな関心がほとんど感じられない。
ちなみに原作は↓