Rudresh Mahanthappaが切り拓くハイブリッドな世界

2011年07月24日
International, Jazz, トピック, 音楽

アメリカ, インド, ギター, サックス, ディアスポラ, パキスタン, ピアノ, ファリード・ハーク, ルドレシュ・マハンサッパ, レズ・アバシ, ヴィジェイ・アイヤー, 他者

文化的、伝統的、地理的な境界を揺さぶり、広がるネットワーク

読むのを楽しみにしていながらそのままになっていたall about jazz.comのルドレシュ・マハンサッパ（Rudresh Mahanthappa）のインタビューを原稿書きの合間にやっとチェック。このサイトのインタビューは基本的にボリュームがあるが、特にマハンサッパの場合は質問もたくさんあったはず。この数年、実に多様なコラボレーションを繰り広げているからだ。

それは彼がインド系であることと無関係ではない。マイナーなレーベルからアルバム・デビューした頃には、インドというレッテルを貼られ、ラヴィ・シャンカールをゲストに…みたいなアドバイスをされることもあったらしい。もちろん、彼が求めていたのはそんな音楽ではなかった。

39歳のマハンサッパと75歳のバンキー・グリーンというまったく世代の異なるアルトサックス奏者がコラボレーションを繰り広げる『Apex』（2010）は、その当時、彼がどんな音楽を求めていたのかを示唆する。

バンキー・グリーンのことは、ノース・テキサスからバークリーに出てきて音楽を学んでいるときに、サックスの講師ジョー・ヴィオラから教えられた。グリーンのアルバム『Places We’ve Never Been』を聴いてぶっ飛んだ彼は、デモテープを送り、助言を求めた。それが関係の始まりだ。

そして、『Apex』と対比してみると興味深いのが、『Kinsmen』（2008）。以前にブログ（Into the Wild 1.0の方）で少し書いたが、ノース・テキサス州立大学で音楽をはじめたときに、彼にインスピレーションをもたらしたのが、兄からプレゼントされたKadri Gopalnathのアルバム『Saxophone Indian Style』だった。

Gopalnathは、南インドの古典音楽カルナーティックに西洋の楽器であるサックスを導入して独自の世界を確立したインドの巨匠。おそらくそのハイブリッドな感覚がマハンサッパを刺激したのだろう。『Kinsmen』では、そのGopalnathとコラボレーションを繰り広げている。

『Kinsmen』（2008）

それから、スティーヴ・レーマンとのコラボレーションである『Dual Identity』（2010）にも注目。レーマンは、エレクトロニクス、コンピュータも駆使する最先端のアーティストだが、サックス奏者としてマハンサッパと接点がないわけではない。

レーマンはその昔、インプロヴァイザー、エデュケーター、アクティヴィストとしてのジャッキー・マクリーンをテーマにした論文を発表している。そして、1960年代にチャールズ・ミンガスが、ジャッキー・マクリーンの後継者として起用したのがバンキー・グリーンだった。

『Dual Identity』（2010）

マハンサッパが、パキスタンのカラチ生まれのギタリストRez Abbasi、タブラ奏者Dan Weissと結成したユニットIndo-Pak Coalitionについては、前にも触れたことがある。ところがインタビューを読んで、マハンサッパが最初、ファリード・ハークとこれをやろうとしていたことを知った。ハークはパキスタン人とチリ人の血を引いているので、やはりIndo-Pak Coalition（インド＝パキスタン連合）が成り立つわけだ。