クリント・イーストウッド 『ヒア アフター』 レビュー
喪失の痛みと孤独を抱えた人々が“媒介者”になるとき…
監督クリント・イーストウッドは、これまで様々な設定で生者と死者の関係を掘り下げてきたが、『グラン・トリノ』(08)でそのアプローチが変化した。以前のように死者と向き合い、死者の声に耳を傾けることで生を見つめなおすだけではなく、生と死の境界まで踏み出し、死者の声を生者にどう届けるのかを問題にするようになった。
『グラン・トリノ』に続く『インビクタス 負けざる者たち』(09)でも、ネルソン・マンデラは大統領であるだけでなく、生者と死者を繋ぐ“媒介者”でもあった。
新作『ヒア アフター』(10)の世界や物語は、そんな流れを踏まえてみるとより興味深く思えてくるはずだ。
パリに住むニュースキャスターのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、休暇で訪れた東南アジアで津波にのまれて臨死体験をし、その時に見たビジョンが頭から離れなくなる。