イエジー・スコリモフスキ 『エッセンシャル・キリング』 レビュー
故郷喪失者はどこでもない場所で、動物性への帰郷を果たす
17年ぶりに監督した『アンナと過ごした4日間』(08)で見事な復活を遂げたポーランドの鬼才イエジー・スコリモフスキ。待望の新作はアフガニスタンにおける戦闘から始まり、最初は9・11以後のテロとの戦いを描く作品のように見える。
バズーカ砲で米兵を吹き飛ばした主人公は、米軍に拘束されて捕虜になり、拷問を受け、軍用機と護送車で移送される。ところが、深夜の山道で事故が起き、彼だけが逃走する。
この逃亡劇によって映画の世界は大きく変化していく。そんな流れは筆者に、ジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』を想起させる。この映画の三部構成は実によくできていた。