ポール・ハギス 『スリーデイズ』 レビュー
- アメリカ, エリザベス・バンクス, カナダ, クリント・イーストウッド, フランス, ブライアン・デネヒー, ポール・ハギス, ラッセル・クロウ, リーアム・ニーソン, 家族, 映画監督, 9・11以後
代償は高くても自由を求める意味を考える
ポール・ハギスがアメリカ映画界で成功を収めるきっかけは、クリント・イーストウッド監督の『ミリオンダラー・ベイビー』(04)の脚本を手がけたことだった。F・X・トゥールの短編集『テン・カウント』(文庫のタイトルは『ミリオンダラー・ベイビー』)を原作にしたこの脚本には、ハギスの思いや独特の人生観を見出すことができる。
1953年、カナダ・オンタリオ州生まれのハギスは、20代でハリウッドにたどり着き、テレビの世界に入ってこつこつと経験を積み重ね、脚本家としての地位を築き上げた。しかしそれはあくまでテレビ界における評価だった。彼の夢は劇映画の脚本を書き、監督することだった。そこで、世紀が変わろうとするころ、40代後半にさしかかっていた彼は、だめもとで劇映画の脚本を書き出した。それが『ミリオンダラー・ベイビー』だった。
この映画に登場するヒロイン、マギーは、13歳からずっとウェイトレスとして働き、30代になってもボクシングのトレーニングを続けている。ハギスがそんな彼女に共感を覚えても不思議はないだろう。だが、彼が作り上げたのは、スポ根ものの成功物語ではない。