ワン・ビン 『無言歌』 レビュー



Review

過去を振り返る視点を排除し死者たちの声なき声を拾い上げる

世界の注目を集める中国の鬼才ワン・ビン監督の日本初公開作品『無言歌』は、ドキュメンタリーで才能を開花させた彼にとって初の劇映画となる。その題材は、文革の嵐が吹き荒れる前に起きた「反右派闘争」の悲劇だ。

毛沢東は56年に党批判を歓迎する運動を推進した後、57年に方針を転換し、苛烈な粛清を開始した。そして、党批判や家族の出自によって「右派」とされた者たちは、辺境での過酷な労働、そして激烈な飢餓との闘いを強いられることになった。

この悲劇には、現代中国の政治体制の原点を見ることができるが、ワン監督のアプローチはそんなことを考える余裕を与えない。

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