リドリー・スコット 『プロメテウス』 レビュー

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自然環境を変えうる大きな力を持つことにはプラスとマイナスの両面がある

リドリー・スコット監督の最新作『プロメテウス』は、2089年に考古学者エリザベスが、3万5千年前の洞窟壁画を発見するところから始まる。そこには星を指し示す巨人の姿が描かれていた。彼女は世界各地の古代遺跡からも見つかっているその巨人の図像が、人類を創造した“エンジニア”の痕跡だと考えていた。

その4年後、巨大企業が莫大な資金を投じた宇宙船プロメテウス号が、壁画に描かれた未知の惑星に到着する。そして、エリザベスを含む17名の乗組員は、想像を絶する真実を目の当たりにすることになる。

この映画は大きく分けてふたつの要素から成り立っている。まず、私たち現生人は必ずしも緩やかな進化を遂げてきたわけではない。

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チョン・ジェホン 『プンサンケ』 レビュー



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ギドクとジェホンは、分断の現実に強烈な揺さぶりをかける

キム・ギドクの凄さは、言葉に頼らず、内部と外部や可視と不可視の境界を示唆する象徴的な表現を駆使して独自の空間を構築し、贖罪や浄化、喪失の痛みや解放などを実に鮮やかに描き出してしまうところにあった。

そんな彼は『悲夢』の撮影中に起こった事故をきっかけに作品が撮れなくなり、久しぶりに発表した『アリラン』でも、自分自身にカメラを向けて喋りまくり、明らかに本質を見失っていた。

しかし、製作総指揮と脚本を手がけたこの『プンサンケ』では、本来のギドクが復活している。

“プンサンケ”とは、38度線を飛び越えて北と南を行き来し、離散家族の最後のメッセージを運ぶ正体不明の男の通称だ。そんな彼のもとに、亡命した北朝鮮元高官の愛人イノクをソウルに連れてくるという依頼が舞い込む。そして、警戒厳重な境界線を極限の状況に追い込まれながら突破していくうちに、ブンサンケとイノクの間には特別な感情が芽生え、彼らは分断という現実に翻弄されていくことになる。

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ロネ・シェルフィグ・インタビュー 『ワン・デイ 23年のラブストーリー』



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ある一日の意味、水のイメージ、音楽と時の流れをめぐって

『幸せになるためのイタリア語講座』や『17歳の肖像』で知られるロネ・シェルフィグ監督の新作『ワン・デイ 23年のラブストーリー』は、デイヴィッド・ニコルズの同名小説の映画化だ。

主人公は、作家を目指す堅実なエマと自由奔放で恋多き男デクスター。映画ではイギリスとフランスを舞台に、大学の卒業式で初めて言葉を交わした二人の23年に渡る歩みが、7月15日という「1日」だけを切り取って描き出される。もちろんその日に何か特別なことが起こるとは限らない。

結婚するとか、子供が生まれるというような記念日がすべて同じ日になることはありえません。それが、原作者が本の中に作り出したゲームなのです。人生の中で特別ではなかった日が、実はとても大事なのかもしれないということを教えてくれます。「二人が初めて一夜を共にしたのに、その日を目撃できないなんて!」と思うこともありました。でも、そこがとても優雅で映画的だと思います。しかも、最後に秘密が明かされた時に、なぜこの一日が描かれていたのかがわかります

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ロジャー・ドナルドソン 『ハングリー・ラビット』 レビュー

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パズルのように組み合わされた現実と虚構のニューオリンズ

ロジャー・ドナルドソン監督の『ハングリー・ラビット』では、主人公の高校教師ウィルが、ある組織と関わりを持ったことから悪夢のような状況に引きずり込まれていく。その秘密組織は、法の裁きを逃れた犯罪者たちに、“代理殺人”というかたちで厳しい制裁を加える。映画では組織の全貌が具体的に明らかにされることはないが、より重要なのは組織と舞台の関係だ。

ウィルと妻のローラがマルディグラを楽しむ場面から始まり、ハリケーン・カトリーナの襲来によって廃墟と化したショッピングモールがクライマックスの背景となるように、この映画ではニューオリンズという舞台が印象的に描かれている。しかも単なる背景にとどまらず、この街の現実が物語と絡み合ってもいる。

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アレクサンダー・ペイン 『ファミリー・ツリー』 レビュー



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連綿とつづく生の営み

『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』(99)、『アバウト・シュミット』(02)、『サイドウェイ』(04)、そして7年ぶりの新作となる『ファミリー・ツリー』。アレクサンダー・ペイン監督の作品には共通点がある。人生の危機に直面した主人公の行動や心理がユーモアを交えて描き出される。そういう設定やスタイルで映画を撮る監督は他にもいるが、ペインは一線を画している。実はこの四作品にはすべて原作となった小説があるが、他の監督が映画化しても、彼のような世界が切り拓けるわけではない。

あまり目立たないが、ペインの作品には別の共通点がある。まず『ハイスクール白書』を振り返ってみよう。ネブラスカ州オマハを舞台にしたこの映画では、表彰もされた信頼が厚い教師が、上昇志向のかたまりのような女子生徒の生き方に抵抗を覚えたことがきっかけで人生の歯車が狂い出し、仕事も家庭もすべてを失ってしまう。最後に逃げるようにニューヨークに向かった彼は、自然史博物館の教育部門に就職し、新たな人生を歩み出す。筆者が注目したいのは、その自然史博物館に展示された原始人のジオラマだ。さり気なく映像が挿入されるだけなので記憶している人は少ないだろう。

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