今週末公開オススメ映画リスト2013/02/14

週刊オススメ映画リスト

今回は『王になった男』『ゼロ・ダーク・サーティ』『先祖になる』『レッド・ライト』『ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀』(順不同)の5本です。

『王になった男』 チュ・チャンミン

韓国のアカデミー賞“大鐘賞”で史上最多15部門を受賞した話題作。実在した朝鮮王朝15代目の王・光海を題材に、史実にフィクションを織り交ぜた歴史大作。

主人公は、王と瓜二つだったために、毒殺に怯える王の影武者をつとめることになった道化師ハソン。影武者が本物の王に成りすます15日間のなかで、最初は戸惑っていた道化師が、真の王として周りを魅了していく。

とにかく面白い。『オールド・ボーイ』で評価されたファン・ジュユンの脚本がしっかりしていて、それぞれのキャラクターにメリハリがあり、駆け引きがスリリング。特に、道化師ハソンと宮中で王の正体を知るふたりの人物、王の側近ホ・ギュンと世話係チョ内官のトライアングルは見応えがある。

王と道化師の二役をこなすイ・ビョンホンも魅せるが、チョ内官に扮するチャン・グァンの演技も見逃せない。本ブログでも取り上げた『トガニ 幼き瞳の告発』で、卑劣極まりない校長を演じて強烈な印象を残した彼が、穏やかな佇まいでハソンに王としての自覚を促していく宦官の世話係を好演している。

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池谷薫 『先祖になる』 レビュー



Review

震災が基層文化を隆起させ、日本固有の信仰を炙り出す

『蟻の兵隊』の池谷薫監督の新作『先祖になる』は、東日本大震災の被災地・岩手県陸前高田市で農林業を営む77歳の佐藤直志に迫ったドキュメンタリーだ。震災のひと月後に陸前高田を訪れ、この老人に出会った池谷監督とクルーは、1年6ヵ月かけて彼を追い、その生き様を浮き彫りにしている。

佐藤直志の家は大津波で壊され、消防団員だった彼の長男は波にのまれて亡くなった。しかし老人は挫けない。仮設住宅に移ることを拒み、壊れた家を離れようとはしない。きこりでもある彼は、元の場所に家を建て直す決断をくだす。材木を確保するために、津波で枯れた杉をチェーンソーで伐り倒し、病魔とも闘いながら夢に向かって突き進んでいく。

これはドキュメンタリーそのものの醍醐味というべきかもしれないが、池谷監督の作品では導入部から結末に至るまでに、テーマや開ける世界が大きく変わっている。

文革を題材にした『延安の娘』では、最初は父親を探す娘が主人公に見えるが、次第にかつての下放青年に広がる波紋が深い意味を持つようになる。孤軍奮闘する元残留兵・奥村和一に迫った『蟻の兵隊』では、最初は残留問題が主題に見えるが、やがて私たちは、奥村が別の顔を露にし、変貌を遂げていくのを目の当たりにする。

新作『先祖になる』にも同じことがいえる。最初は佐藤直志を通して震災を描き出す作品のように見える。しかし老人の生き様からは次第に異なるテーマが浮かび上がってくる。

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