キム・グエン 『魔女と呼ばれた少女』 レビュー

Review

異文化や他者に対する強い関心から紡ぎ出される少女の神話的な物語

キム・グエン監督の『魔女と呼ばれた少女』では、アフリカのコンゴ民主共和国を舞台に、政治学者P・W・シンガーが『子ども兵の戦争』で浮き彫りにしているような子供兵の世界が描き出される。

アフリカの子供兵を題材にした作品とえいば、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督の『ジョニー・マッド・ドッグ』が記憶に新しい。だが、この二作品は、作り手の視点や表現がまったく違う。

『ジョニー・マッド・ドッグ』の原作は、コンゴ共和国出身のエマニュエル・ドンガラが、自身の体験をヒントに書いた同名小説だ。ドキュメンタリーの作家として活動してきたソヴェール監督は、その舞台をリベリアに変更し、15人の元子供兵を起用し、非常にリアルなドラマを通して、ホモソーシャルな連帯関係や家族を奪われる痛み、ほとばしる憎しみを描き出している。

キム・グエン監督のアプローチは、それとはまったく異なっている。プレスに収められた彼のインタビューでは、映画の出発点が以下のように説明されている。

10年前に、神の生まれ変わりと自認し、反政府軍を率いていると語るビルマの双子の少年兵をニュースで見て、現代の神話性に惹かれたのが、脚本の発端です

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トピックス

笑顔がなんとも素敵なこの老人からいま私たちが学べることは決して少なくない

池谷薫監督の新作『先祖になる』は、筆者の心の深いところに響く作品でした。それだけにいろいろ感じるものがあり、ブログにアップしたレビューは長めのテキストになりました。ネットではやはり長文のテキストは敬遠されがちなので、正直、それほど多くの人の目にとまるとは思っていませんでした。

ところが、ベニチガヤさんのような常連さんだけではなく、はじめて来られたと思われる方々が、ときに本文の引用なども交えていろいろツイートしてくださり、PVがどんどん上昇し、びっくりしました。

その後、『先祖になる』公式サイトのfacebookに連動した最新情報でも取り上げていただき、嬉しかったのですが、同時に少々不安にもなりました。冒頭に書いたように、とにかく長文のレビューですから、このレビュー情報だけが浮いてしまうのではと思ったのですが、まさかいいねが3ケタに迫り、コメントまでいただき、またも面食らいました。

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