『おじいちゃんの里帰り』 ヤセミン・サムデレリ・インタビュー 「キネマ旬報」掲載

News

ユーモラスに綴られたトルコ系移民家族の物語

トルコ系ドイツ人二世の女性監督ヤセミン・サムデレリの長編デビュー作、ドイツで30週以上のロングランとなり、150万人動員の大ヒットを記録した『おじいちゃんの里帰り』(11)が、2013年11月30日(土)より公開になります。

本日発売の「キネマ旬報」2013年12月上旬号に、上記のタイトルでヤセミン・サムデレリ監督のインタビューが掲載されています。全4ページで、筆者の考察も盛り込み、ボリュームのある記事になっています。

この映画、ヤセミンと実妹ネスリンが手がけた脚本がまず素晴らしい。60年代半ばにトルコからドイツに渡り、がむしゃらに働き、70代となったフセイン。そんな彼が里帰りを思いつき、それぞれに悩みを抱える三世代の家族がマイクロバスに乗り込み、故郷を目指します。さらに、家族の歴史の語り部ともいえる22歳の孫娘チャナンを媒介に挿入される過去の物語では、若きフセインがドイツに渡り、妻子を呼び寄せ、言葉も宗教も違う世界に激しく戸惑いながら根を下ろしていきます。

続きを読む

『オンリー・ゴッド』のニコラス・ウィンディング・レフンにインタビューした

News

主人公のなかのマスキュリニティとフェミニニティをめぐって

2014年1月25日(土)より新宿バルト9ほかで全国ロードショーになる新作『オンリー・ゴッド』(13)のプロモーションで来日したデンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン監督にインタビューしました。

タイのバンコクを舞台にした『オンリー・ゴッド』は、様々な賞に輝いた『ドライブ』につづいてライアン・ゴズリングとレフンが再びタッグを組んだ作品ですが、『ドライブ』の続編のようなものを想像していると、頭を抱えることになると思います。

『ドライブ』にはジェイムズ・サリスの同名小説という原作があり、脚色の段階でかなり手が加えられてレフンの世界に塗り替えられてはいましたが、彼の世界がストレートに表現されていたわけではありません。

これに対して『オンリー・ゴッド』は、ストレートに表現した作品で、その視点や表現など、『ドライブ』以前の『ブロンソン』や『ヴァルハラ・ライジング』に通じるものがあります。ゴズリング扮するジュリアンが最終的に到達する境地は、『ヴァルハラ・ライジング』のワン・アイのそれと似た空気を漂わせています。

続きを読む

『いとしきエブリデイ』 劇場用パンフレット

News

感情と距離の間にあるマイケル・ナイマンの音楽

2013年11月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショーになるマイケル・ウィンターボトム監督の新作『いとしきエブリデイ』(12)の劇場用パンフレットに、上記のようなタイトルでコラムを書いています。

映画に登場する幼い子供たちは、実の4兄妹。ウィンターボトムは、プロの俳優とその子供たちから成る家族の日常を、5年の歳月を費やして撮影してこの作品を作り上げました。様々なかたちでフィクションとドキュメンタリーの狭間にリアルを求めつづけるウィンターボトムならではのアプローチだと思います。

ウィンターボトムはこの新作を、99年の『ひかりのまち』と対を成す作品と位置づけています。それはキャストやスタッフにも表れています。『いとしきエブリデイ』では、『ひかりのまち』で長女のデビーに扮したシャーリー・ヘンダーソンと三女モリーの夫エディに扮したジョン・シムが、カレンとイアンという夫婦を演じています。そしてどちらもマイケル・ナイマンが音楽を担当しています。

続きを読む

ニールス・アルデン・オプレヴ 『デッドマン・ダウン』 レビュー

Review

異なる世界を生きる他者との出会い、復讐という呪縛からの解放

『デッドマン・ダウン』は、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で成功を収めたデンマーク人監督ニールス・アルデン・オプレヴのハリウッド進出作となるサスペンス・アクションだ。

主人公は、裏社会で不動産業を牛耳るアルフォンスの下で働く殺し屋ヴィクター。アルフォンスは正体がわからないやからからの執拗な脅迫に悩まされ、そんなボスを見つめるヴィクターには別の顔がある。妻子を殺され、自分も殺されかけた彼は、名前を変え、素性を隠し、密かに復讐の計画を進めている。

そんなとき、向かいのマンションに住む顔見知りの女ベアトリスが、ヴィクターに接触してくる。彼女の顔には交通事故による生々しい傷跡があった。自宅のバルコニーから彼が人を殺すのを目撃し、撮影していたベアトリスは、事故によって彼女の未来を奪った男の殺害を依頼する。

続きを読む