スティーヴ・マックィーン 『それでも夜は明ける』 レビュー
- アメリカ, イギリス, キウェテル・イジョフォー, コリン・ステットソン, サラ・ポールソン, ジェンダー, スティーヴ・マックィーン, ブラッド・ピット, ベネディクト・カンバーバッチ, ポール・ジアマッティ, マイケル・ファスベンダー, ルピタ・ニョンゴ, 他者, 実話, 家族, 映画監督, 痛み, 音楽, 風景
檻に囚われた人間
イギリス出身の鬼才スティーヴ・マックィーンの映画を観ることは、主人公の目線に立って世界を体験することだといえる。
たとえば、前作『SHAME-シェイム-』では、私たちは冒頭からセックス依存症の主人公ブランドンの日常に引き込まれる。彼は仕事以外の時間をすべてセックスに注ぎ込む。自宅にデリヘル嬢を呼び、アダルトサイトを漁り、バーで出会った女と真夜中の空き地で交わり、地下鉄の車内で思わせぶりな仕草を見せる女をホームまで追いかける。だが、彼の自宅に妹が転がり込んできたことで、セックス中心に回ってきた世界はバランスを失っていく。この映画では、なぜ彼が依存症になったのかは明らかにされない。
新作『それでも夜は明ける』では、そんなマックィーンのアプローチがさらに際立つ。映画のもとになっているのは1853年に出版されたソロモン・ノーサップの回顧録だが、その原作と対比してみると映画の独自の視点が明確になるだろう。