ヤセミン・サムデレリ・インタビュー 『おじいちゃんの里帰り』:ユーモラスに綴られたトルコ系移民家族の物語

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実体験が埋め込まれた監督姉妹の脚本

トルコ系ドイツ人の監督といえば、ファティ・アキンがすぐに思い出される。女性監督ヤセミン・サムデレリは、そのアキンと同じ1973年生まれのトルコ系二世だが、本国で7ヶ月のロングランとなった監督デビュー作『おじいちゃんの里帰り』では、アキンとはまた違った独自の視点でトルコ系移民の世界を描き出している。

彼女はコメディにこだわり、三世代の家族の過去・現在・未来を見つめていく。一家の主は、60年代半ばにトルコからドイツに渡り、がむしゃらに働いて家族を養い、齢を重ねて70代となったフセイン。そんな彼が里帰りを思いつき、それぞれに悩みを抱える家族がマイクロバスに乗り込み、故郷を目指す。さらに、家族の歴史の語り部ともいえる22歳の孫娘チャナンを媒介に挿入される過去の物語では、若きフセインがドイツに渡り、妻子を呼び寄せ、言葉も宗教も違う世界に激しく戸惑いながら根を下ろしていく。

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ニコラス・ウィンディング・レフン・インタビュー 『オンリー・ゴッド』

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アートとは感情の解釈でその根底には衝動があり、セックスと暴力がキャラクターを定義づける

デンマーク出身の異才ニコラス・ウィンディング・レフン監督とライアン・ゴズリングが再びタッグを組んだ新作『オンリー・ゴッド』には、『ドライヴ』とはまったく違う世界が広がる。

この映画を観てまず思い出すのは、レフン作品の主人公たちが、その暴力性とは相容れないような複雑なセクシャリティを体現していることだ。タイのバンコクを舞台にした新作の主人公は、兄とともにボクシングジムを隠れ蓑に麻薬取引で幅を利かせるジュリアンだが、この人物も例外ではない。

僕が描くキャラクターたちはそのセックスライフによって定義されている。というのも、アートというのは感情の解釈であって、その根底には衝動があり、セックスと暴力がキャラクターを定義づけるからだ。たとえば『プッシャー』の主人公は、セックスをしない男で、女に愛情表現ができないために自分の首を絞めてしまう。『ブロンソン』の主人公は、名声を得たいがために刑務所に入る。自分のセックスライフを放棄する代わりに名声を手にするわけだ。『ドライヴ』でゴズリングが演じる男は、いわば純愛信奉者で、観念的な愛を求めるので彼女と結ばれることがない。『オンリー・ゴッド』のジュリアンの場合は、母親の子宮に鎖で繋がれ、それを断ち切れない男だ。だからセクシャリティが歪み、セックスができず、暴力で発散する

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『エヴァの告白』 劇場用パンフレット

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ジェームズ・グレイでなければ描けないアメリカン・ドリームの物語

2014年2月14日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーになるジェームズ・グレイ監督の新作『エヴァの告白』(13)の劇場用パンフレットに、上記のようなタイトルで作品評を書いています。キャストは、マリオン・コティヤール、グレイ作品に不可欠な存在になっているホアキン・フェニックス、そしてジェレミー・レナー。

『リトル・オデッサ』『裏切り者』『アンダーカヴァー』『トゥー・ラバーズ』というこれまでの作品では、グレイ監督が生きてきた同時代が背景になっていましたが、新作では1921年、移民の玄関口だったエリス島から物語が始まり、ロウアー・イーストサイドを中心に展開していきます。これは、グレイ監督の祖父母が実際にロシアからエリス島にたどり着き、入国審査を経てアメリカに移住したことが、作品のインスピレーションのひとつになっているからです。

パンフの原稿では、『リトル・オデッサ』や『アンダーカヴァー』などの過去作にも触れ、グレイ監督がどんな影響を受けて独自のスタイルを確立し、新作ではそれがこれまでにない要素とどのように結びついているかを明らかにするような書き方をしていますので、これまでグレイ作品に縁がなかった人にも参考になるかと思います。また、男女の複雑な感情を描き出す脚本と演出の素晴らしさも伝わるかと思います。

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ジェフ・ニコルズ 『MUD‐マッド‐』 レビュー

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サザン・ゴシック、少年のイニシエーション、そして打ちひしがれた男たちの再生

監督第2作の『テイク・シェルター』(11)で日本でも認知されるようになったジェフ・ニコルズは、デビュー当時のあるインタビューで大学時代にコンテンポラリーな南部作家に傾倒していたことに触れ、ラリー・ブラウン、ハリー・クルーズ、コーマック・マッカーシーの名前を挙げていた。

新作『MUD‐マッド‐』(12)は、南部で培われた“サザン・ゴシック”というナラティブ(物語)への愛着が凝縮されたような映画だが、興味深いのはこの作品に続くように、デヴィッド・ゴードン・グリーンや監督もこなすジェームズ・フランコが、それぞれラリー・ブラウンとコーマック・マッカーシーの小説を映画化した『ジョー(原題)』(13)や『チャイルド・オブ・ゴッド(原題)』(13)を発表していることだ。サザン・ゴシックは隠れたトレンドになっているのかもしれない。

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ダニー・ボイル 『トランス』 レビュー

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記憶の迷宮でせめぎ合う男女の欲望

ダニー・ボイル監督の『トランス』は、白昼のオークション会場からゴヤの「魔女たちの飛翔」が強奪されるところから始まる。40億円の名画を奪ったのは、密かにギャングと手を組んだ競売人のサイモンだったが、なぜか途中で計画とは違う行動に出た彼は、ギャングのリーダーであるフランクに殴られ、絵画の隠し場所の記憶を失ってしまう。

そこで催眠療法士のエリザベスが雇われ、記憶を取り戻そうとする。しかし、そのエリザベスには秘密があり、療法を受けるサイモンの頭のなかでは、主人公たちを翻弄するように記憶が迷宮と化していく。

自分を取り巻く世界を思い通りにしたいという欲望は誰もが持っているものだが、それにとらわれすぎれば深刻なトラブルに巻き込まれる。ダニー・ボイルはこれまで様々な設定でそんなドラマを描き出してきた。

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