ファン・ドンヒョク 『トガニ 幼き瞳の告発』 レビュー



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告発のドラマが炙り出す内面化された“軍事主義”

2005年に韓国のある聴覚障害者学校で信じがたい事件が発覚した。2000年から6年もの間、校長を始め教員らが複数の生徒たちに性的虐待を行っていた。『トガニ 幼き瞳の告発』は、この事件を題材にしたベストセラー小説の映画化だ。

美術教師カン・イノが恩師の紹介で赴任した田舎町の聴覚障害者学校は、校長の双子の弟の行政室長が平然と賄賂を要求したり、生徒たちが何かに怯えているなど、最初から不穏な空気を漂わせていた。

イノは寮長から過度の体罰を受けていた女生徒を病院に運んだことをきっかけに性的虐待の事実を知る。怒りに駆られる彼は、マスコミを利用して非道を正そうとするが、裁判をめぐって困難な壁が次々と立ちはだかる。

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リドリー・スコット 『プロメテウス』 レビュー

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自然環境を変えうる大きな力を持つことにはプラスとマイナスの両面がある

リドリー・スコット監督の最新作『プロメテウス』は、2089年に考古学者エリザベスが、3万5千年前の洞窟壁画を発見するところから始まる。そこには星を指し示す巨人の姿が描かれていた。彼女は世界各地の古代遺跡からも見つかっているその巨人の図像が、人類を創造した“エンジニア”の痕跡だと考えていた。

その4年後、巨大企業が莫大な資金を投じた宇宙船プロメテウス号が、壁画に描かれた未知の惑星に到着する。そして、エリザベスを含む17名の乗組員は、想像を絶する真実を目の当たりにすることになる。

この映画は大きく分けてふたつの要素から成り立っている。まず、私たち現生人は必ずしも緩やかな進化を遂げてきたわけではない。

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チョン・ジェホン 『プンサンケ』 レビュー



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ギドクとジェホンは、分断の現実に強烈な揺さぶりをかける

キム・ギドクの凄さは、言葉に頼らず、内部と外部や可視と不可視の境界を示唆する象徴的な表現を駆使して独自の空間を構築し、贖罪や浄化、喪失の痛みや解放などを実に鮮やかに描き出してしまうところにあった。

そんな彼は『悲夢』の撮影中に起こった事故をきっかけに作品が撮れなくなり、久しぶりに発表した『アリラン』でも、自分自身にカメラを向けて喋りまくり、明らかに本質を見失っていた。

しかし、製作総指揮と脚本を手がけたこの『プンサンケ』では、本来のギドクが復活している。

“プンサンケ”とは、38度線を飛び越えて北と南を行き来し、離散家族の最後のメッセージを運ぶ正体不明の男の通称だ。そんな彼のもとに、亡命した北朝鮮元高官の愛人イノクをソウルに連れてくるという依頼が舞い込む。そして、警戒厳重な境界線を極限の状況に追い込まれながら突破していくうちに、ブンサンケとイノクの間には特別な感情が芽生え、彼らは分断という現実に翻弄されていくことになる。

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ロネ・シェルフィグ・インタビュー 『ワン・デイ 23年のラブストーリー』



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ある一日の意味、水のイメージ、音楽と時の流れをめぐって

『幸せになるためのイタリア語講座』や『17歳の肖像』で知られるロネ・シェルフィグ監督の新作『ワン・デイ 23年のラブストーリー』は、デイヴィッド・ニコルズの同名小説の映画化だ。

主人公は、作家を目指す堅実なエマと自由奔放で恋多き男デクスター。映画ではイギリスとフランスを舞台に、大学の卒業式で初めて言葉を交わした二人の23年に渡る歩みが、7月15日という「1日」だけを切り取って描き出される。もちろんその日に何か特別なことが起こるとは限らない。

結婚するとか、子供が生まれるというような記念日がすべて同じ日になることはありえません。それが、原作者が本の中に作り出したゲームなのです。人生の中で特別ではなかった日が、実はとても大事なのかもしれないということを教えてくれます。「二人が初めて一夜を共にしたのに、その日を目撃できないなんて!」と思うこともありました。でも、そこがとても優雅で映画的だと思います。しかも、最後に秘密が明かされた時に、なぜこの一日が描かれていたのかがわかります

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ロジャー・ドナルドソン 『ハングリー・ラビット』 レビュー

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パズルのように組み合わされた現実と虚構のニューオリンズ

ロジャー・ドナルドソン監督の『ハングリー・ラビット』では、主人公の高校教師ウィルが、ある組織と関わりを持ったことから悪夢のような状況に引きずり込まれていく。その秘密組織は、法の裁きを逃れた犯罪者たちに、“代理殺人”というかたちで厳しい制裁を加える。映画では組織の全貌が具体的に明らかにされることはないが、より重要なのは組織と舞台の関係だ。

ウィルと妻のローラがマルディグラを楽しむ場面から始まり、ハリケーン・カトリーナの襲来によって廃墟と化したショッピングモールがクライマックスの背景となるように、この映画ではニューオリンズという舞台が印象的に描かれている。しかも単なる背景にとどまらず、この街の現実が物語と絡み合ってもいる。

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