園子温 『冷たい熱帯魚』レビュー



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演じることが不可能な極限まで追い詰められた男がむきだしにするもの

家族の不和を抱えつつ、小さな熱帯魚店を営む主人公・社本が、同業者で人の良さそうな村田と知り合ったことで、想像を絶する破滅的な世界に引きずり込まれていく。

園子温監督の『冷たい熱帯魚』は、『紀子の食卓』や『愛のむきだし』で突き詰められてきた家族の世界にひとつの区切りをつける作品といえる。

筆者が『紀子の食卓』公開時に園監督にインタビューしたとき、彼は“家族”についてこのように語っていた(園子温インタビュー)。

「日本では、伝統的な家族の在り方というものが、古くからあるように見せかけているけれども、本当はないと思うんですよ。それがあるのなら、いつから崩壊したのか逆に問いただしたい。そんな曖昧さのなかで、幸せな家族の在り方があると信じ込み、家族を形成していくことの危うさを表現したかった」

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シャロン・マグアイア 『ブローン・アパート』レビュー

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テロで家族を奪われたヒロインはいかにして喪失を受け入れるのか

『ブローン・アパート』のヒロインは、警察の爆弾処理班の夫と4歳の息子とロンドンのイーストエンドに建つ公団に暮らす“若い母親”(ミシェル・ウィリアムズ)だ(この映画では彼女の名前は明確にされない)。夫の危険な仕事が大きなストレスになっていた彼女は、パブで出会ったジャスパー(ユアン・マクレガー)と関係を持ってしまう。彼は公団の向かいに建つジョージアン様式の建物に暮らす新聞記者だった。

そして事件が起こる。夫と息子をサッカー観戦に送り出した彼女は、路上で偶然再会したジャスパーと情事に耽っていた。そのときテレビのサッカー中継が爆音にかき消される。スタジアムで自爆テロが起こったのだ。このテロで息子と夫を亡くした彼女は、罪悪感と喪失感に苛まれる。ジャスパーと夫の上司だったテレンスが、そんな彼女に手をさしのべようとするが、やがてテロ事件をめぐる秘密が明らかになる。

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1月29日(土)より銀座シネパトス他にて全国順次ロードショー (C) 2008 CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION/INCENDIARY LTD. ALL RIGHTS RESERVED

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『悪魔を見た』『洋菓子店コアンドル』試写



試写室日記

試写を2本観た。

『悪魔を見た』 キム・ジウン

凄惨な場面の連続とまったく救いのない展開に嫌悪感をもよおし、拒否反応を起こす人も少なくないだろうが、そういう反応を恐れずに復讐を徹底的に突き詰めることによって見えてくるものがある。どうすれば無残に殺害された婚約者と同じ苦しみを犯人に味あわせることができるのか。

『オールド・ボーイ』のように時間を費やせばそれを確認できるかもしれないが、この映画の主人公スヒョン(イ・ビョンホン)にはそういう余裕はない。だから犯人ギョンチョル(チェ・ミンシク)との間にある時間を強引に引き延ばそうとする。だがその引き延ばされた時間のなかでスヒョンとギョンチョルは、『ダークナイト』のバットマンとジョーカーのような図式に陥り、主人公が犯人の力の源になってしまう。

『洋菓子店コアンドル』 深川栄洋

「名は体を表す」ではなく「ケーキは体を表す」というべきか。なつめ(蒼井優)が最初に作ってみせるクリームがゆるくべったりとしたケーキは、他人にべったりと依存して生きている、生きようとしている彼女自身を表している。そして作るケーキが変わると彼女も変わる。

ロバート・ケナー 『フード・インク』レビュー

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食品を通してわたしたちを支配する見えないシステムの脅威

ロバート・ケナー監督のドキュメンタリー『フード・インク』では、工業化された農業、多国籍企業による食品の支配、利益だけを追求する徹底した合理化が生み出す脱人間化といったテーマが掘り下げられていく。

この映画のプロデューサーで、中心的なガイド役を務めているのは、『ファストフードが世界を食いつくす』(楡井浩一訳/草思社/2001年)の著者でジャーナリストのエリック・シュローサーだ。ケナー監督はプレスに収められたインタビューで、この映画の企画について以下のように語っている。

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1月22日(土)よりシアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー! (C)Participant Media

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クリス・マロイ 『180° SOUTH/ワンエイティ・サウス』レビュー

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1968年から2008年の間に自然と人間の関係はどう変化したか

クリス・マロイ監督のドキュメンタリー『180°SOUTH/ワンエイティ・サウス』は、「patagonia」と「THE NORTH FACE」という世界的なアウトドア・ブランドの創業者であるイヴォン・シュイナードとダグ・トンプキンスがかつて成し遂げた伝説の旅のエピソードから始まる。

60年代初頭から機能性に優れた登山用具を製造していたイヴォンは、1968年のある日、友人のダグからパタゴニアの山に登る旅に誘われた。彼らは、サーフボードや登山用具、旅を記録するための16ミリカメラなどをバンに積み込み、未舗装のパンアメリカン・ハイウェイを南下した。そして、パタゴニアの大自然、未開の地を踏破した経験は、彼らの人生に大きな影響を及ぼすことになった。

そんなプロローグに続いて、この映画の主人公であるジェフ・ジョンソンが登場する。8歳でロッククライミングとサーフィンに魅了され、アウトドアを生き甲斐にする彼は、10年前に伝説の旅の記録映像を見て衝撃を受け、それを追体験する機会をうかがっていた。そして伝説の旅から40年後、彼はメキシコからパタゴニアに向かうヨットにクルーとして乗り込む。

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1月22日(土)より渋谷・シネクイントにて【20日間限定】ロードショー!ほか全国順次公開!(C)2009 180°SOUTH LLC.

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