『RIVER』 『NINIFUNI』 試写



試写室日記

本日は試写を2本。

『RIVER』 廣木隆一

秋葉原の無差別殺傷事件で恋人を失ったヒロインが、秋葉原で恋人の痕跡をたどり、様々な人物との出会いを通して次第に立ち直り、未来に踏み出していく。

秋葉原の事件を題材にした作品で筆者が思い出すのは、佐々木友輔監督の『夢ばかり、眠りはない』だ。あの映画では、事件へのこだわりや、それを題材にする必然性が感じられたし、秋葉原から取手の郊外へと視点が移行していく展開にも説得力があった。

この『RIVER』の場合は、その必然性が弱い。事件は、秋葉原を舞台にした世代論的なドラマを描くためのきっかけにとどまっている。どうしてもこの事件でなければ表現できない喪失と再生の物語になってはいない。それを東日本大震災の被災地の光景と接続してしまうと、さらに焦点がぼやける。

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『J・エドガー』試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『J・エドガー』 クリント・イーストウッド

J・エドガー・フーヴァーという題材は最初に聞いたときには意外な気がしたが、実際に映画を観るとなるほどと頷ける。イーストウッドはさすがにブレない。「死」に対する彼の視点が変化したのは『グラン・トリノ』だったが、この新作はしっかり『グラン・トリノ』につながっている。

あらためてレビューを書くつもりだが、とりあえずこの映画をじっくり味わうためには、アンソニー・サマーズの『大統領たちが恐れた男:FBI長官フーヴァーの秘密の生涯』に目を通しておいたほうがいい。いろいろ時間が飛ぶので、いくらか予備知識がないとついていけなくなると思う。

本書は映画の原作というわけではないが、脚本を書いたダスティン・ランス・ブラックは参考にしているはず。

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『ハンター』試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『ハンター』 ダニエル・ネットハイム

ウィレム・デフォー主演のオーストラリア映画。タスマニアの大自然のなかで、絶滅したとされるタスマニアタイガーを探し求めるハンターをめぐる人間ドラマ。コーマック・マッカーシーショーン・ペンが掘り下げようとするような「狩猟」に強い関心を持つ筆者には、そそられる物語であり世界だった。

このドラマでは、森林伐採を生業とする労働者とエコロジストが対立しているが、ハンターはどちらにも属さない微妙な立場にある。しかも、彼はとあるバイオ・テクノロジー企業に雇われている。つまり、様々な力がせめぎ合う状況のなかで、彼はハンターとしての生き方や自然との関係性を問い直さざるをえなくなる。

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『メランコリア』試写



試写室日記

本日は試写を1本。

『メランコリア』 ラース・フォン・トリアー

前作『アンチクライスト』を観たときに、これはフォン・トリアーが心を病んだからこそ切り拓くことができたヴィジョンだと強く感じた。前にも引用したと思うが、渡辺哲夫の『祝祭性と狂気 故郷なき郷愁のゆくえ』には以下のような記述がある。

たとえば現代精神医学も、その解くべき封印の一つではないだろうか。絶え難い苦痛、絶望などが症状であるならば、もちろん治療という形で病気を封印すべきと思うが、生命の輝きそのもののような狂気もあり、これは本来、悲惨不毛なだけの病気でないにもかかわらず、これをも精神科医療の名のもとに封印してしまうことが少なくない

フォン・トリアーは「生命の輝きそのもののような狂気」を封印することなく、『アンチクライスト』を作った。

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『人生はビギナーズ』試写



試写室日記

本日は試写を1本。

『人生はビギナーズ』 マイク・ミルズ

マイク・ミルズの新作。彼のプライベートストーリーの映画化だが、これはほんとに素晴らしい。というより凄い。心を揺さぶられるだけではなく、サバービアや歴史に対する視点など実に奥が深い。

マイク・ミルズの父親は、45年連れ添った妻に先立たれたあと、75歳にして「同性愛者として残りの人生を楽しみたいんだ」とカミングアウトし、その言葉通りに人生を愉しみ、告白から5年後に他界したという。

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