Shearwaterの新作『Animal Joy』が2月にリリース

トピックス

新天地Sub Popから新作を出すメイバーグはどこに向かうのか

シアウォーター(Shearwater)は、1999年にテキサス州オースティンで結成されたインディ・ロック・バンド。そのフロントマンであるジョナサン・メイバーグ(Jonathan Meiburg)の経歴はかなりかわっている。

大学を卒業したメイバーグは、目的地や研究対象がかなり自由に選べる“Watson Fellowship”というユニークな奨学金を得て、まず南米大陸南端に位置する諸島ティエラ・デル・フエゴに向かい、そこからフォークランド諸島を訪れた。アメリカ南西部を出たこともなかった彼は、地の果てで生きる人々、そのコミュニティと場所の繋がりに強い関心を持っていた。

そんな彼はフォークランド諸島でイギリス人の鳥類学者ロビン・ウッズに出会う。そのウッズがアシスタントを求めていたことから名乗りをあげ、鳥類の研究に踏み出していく。様々な鳥類が生息する諸島で、彼が特に惹かれたのが、かつてダーウィンも興味を覚えていたというStriated Caracara(別名:Johnny Rook)だった。そして帰国後、テキサス大学の大学院に進み、生物地理学を専攻した彼は、そのStriated Caracaraをテーマにした論文を発表した。

この経験は、シアウォーターのフロントマンとしての音楽活動とも深く結びついている。バンドの名前であるShearwaterはミズナギドリを意味する。彼らのアルバムのジャケットにはしばしば鳥が使われている。もちろん歌詞も、ナチュラリストの視点で、鳥を中心にした生き物、地の果ての島、自然、環境の変化、人間との関係などが表現されている。

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『The Rip Tide』 by Beirut and 『Bombay Beach』 by Alma Har’el

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訪れたことのない場所から過去や記憶のなかの場所へ

BeirutのフロントマンであるZack Condonが生み出す音楽と場所との関係は非常に興味深い。彼はニューメキシコのサンタフェで育ったが、これまでBeirutの音楽と彼のバックグラウンドに直接的な結びつきはほとんど見出せなかった。

Condonはバルカン・ブラスにインスパイアされて、Beirutのデビューアルバム『Gulag Orkestar』(2006)を作った。しかし、彼自身がバルカンを訪れ、音楽に接したわけではない。

『Gulag Orkestar』 (2006)

きっかけは、カレッジをやめてヨーロッパに行き、アムステルダムのアパートで従兄弟と暮らしていたときに、上階に住むセルビア人のアーティストがバルカン・ブラスのアルバムをがんがんかけていたことだった。

しかしCondonは、単にバルカン・ブラスに影響されてアルバムを作ったというわけではない。彼はよくインタビューで、自分が訪れたり、住んだりしたことのない「場所」により影響されることがあると語っているし、そういう指摘もされている。

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『Live at Sint-Elisabethkerk』 by Balmorhea

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ベルギーの教会に広がるテキサスのサウンドスケープ

Balmorheaは、テキサス州オースティンを拠点に活動するインストゥルメンタル・アンサンブル。2006年にRob LoweとMichael Mullerによって結成された。ギター、バンジョー、ピアノなどを操るこのふたりに、ヴァイオリンのAisha Burns、チェロのDylan Rieck、ダブルベースのTravis Chapman、ドラムスのKendall Clarkが加わった6人組である。

筆者は固有の場所性が失われていく状況のなかで、現実に縛られない領域や次元にどのように場所性が見出され、サウンドスケープが生み出されるのかに関心を持っている。もちろん誰もがそれを意識して音楽を作っているわけではないが、Balmorheaの場合はかなり自覚的であるように思う。

たとえば、フィールド・レコーディングとインストゥルメンタルが高度に融合した2作目の『River Arms』では、スモールタウンで過ごした子供の頃の記憶や<The Summer>や<The Winter>というタイトルに表れている季節に対する感覚が場所性に結びついていた。

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『Adam’s Bushes Eva’s Deep』 by Nasekomix

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カメン・カレフ監督のブルガリア映画『ソフィアの夜明け』を観て、ソフィア出身のバンド“Nasekomix”に魅了された人は少なくないはず。この映画には、<Lady Song>と<Inject Love Song (Inject Me With Love)>の2曲が、彼らの演奏シーンとともに挿入されていた。

『Adam’s Bushes Eva’s Deep』は、彼らのデビューアルバム。エレクトロニック、ジャズ、パンク、タンゴなど多様なジャンルを取り込みつつ、無駄を削ぎ落とし、空間を生かすミニマルな音作り。だから、アコーディンやキーボードも担当するAndronia Popovaの囁きかけてくるような、影と透明感のあるヴォーカルが際立ち、独特の親密さを生み出す。

adam eva

Adam's Bushes Eva's Deep

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