『Samdhi』 by Rudresh Mahanthappa

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エレクトリック・ミュージックとの境界に“マジックアワー”を探る

インド系アメリカ人のサックス奏者Rudresh Mahanthappaの多面的な活動については、「Rudresh Mahanthappaが切り拓くハイブリッドな世界」に書いたが、その最後のところで少しだけ触れたニューアルバム『Samdhi』がリリースされている。このプロジェクトは、2008年にMahanthappaがグッゲンハイム奨学金を獲得したことがきっかけで生まれ、これまでとは編成が異なるバンドが結成され、このアルバムに結実した。

メンバーと楽器の構成は、Mahanthappa(アルトサックス、ラップトップ)、David Gilmore(エレクトリック・ギター)、Rich Brown(エレクトリック・ベース)、Damion Reid(ドラムス)、”Anand” Anatha Krishnan(ムリダンガム、カンジーラ)。↓今回は自身の音楽のルーツとして、よりファンキーでエレクトリックな音楽、グローバー・ワシントンJr.やデヴィッド・サンボーンやブレッカー・ブラザーズの名前を挙げているところが、意外でもあり新鮮でもある。

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『Afterquake』 by Abigail Washburn & The Shanghai Restoration Project

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中国・四川大地震の悲劇はどのように記憶されていくのか

ハリケーン・カトリーナの悲劇を題材にしたTed Hearneの『Katrina Ballads』のことを書いているときに、このアルバムのことを思い出した。アメリカ人のフォーク・シンガー、Abigail Washburnと主にエレクトロニカを手がける中国系のプロデューサー、Dave Liangのコラボレーションである『Afterquake』は、2008年の四川大地震の悲劇から生まれた。

ふたつの作品のアプローチはまったく違う。Hearneは『Katrina Ballads』で、ブッシュ大統領やバーバラ・ブッシュ、カニエ・ウェスト、生存者などが発した発言を取り込んだ。その言葉は異なるシンガーによって様々なスタイルで歌われる。

Abigail WashburnとDave Liangは、震災の一年後に被災地を訪れ、そこに生きる子供たちの様々な声を広い集め、伝統的な音楽、復興の響き、子供たちの歌やコーラス、フォークとエレクトロニクスが融合したサウンドスケープを作り上げた。

『Afterquake』 (2009)

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『Collage d’intentions part one & two』 『White Midsummer Forest』 by eeem

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鳥の声に導かれてフィンランドの音の森を散策する

筆者が住んでいるビルの隣にたっている古い建物、その壁面にあいた穴に名前も知らない鳥が巣をつくり、毎日、朝から賑やかな鳴き声が聞こえる。

そのせいかどうかわからないが、最近は、自然の音のなかでも特に鳥の声に敏感になっているような気がする。

時間があるときには、世界各地の鳥の声をレクチャーしてくれるaudiobookを聴いたりもする。↓たとえばこれは、イギリスの森林地帯に住む鳥たちのガイド。他にもいろいろあるので、いずれ取り上げるかもしれない。

『A Guide to British Woodland Birds』

フィンランドのヘルシンキを拠点に活動するEeemの音楽は、ジャンルでいえばエレクトロニック・アンビエントということになるかと思うが、鳥の声を使ったサウンドスケープが印象に残る。

『Collage d'intentions part one』

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『You Are Not Alone I & II (Sohrab remix album)』 by Various Artists

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大都市テヘランに生きるミュージシャンの孤独と絶望

昨年公開されたクルド系イラン人の監督バフマン・ゴバディの『ペルシャ猫を誰も知らない』(09)には、テヘランのアンダーグラウンドで活動する様々なミュージシャンたちが登場する。インディ・ロック、フュージョン、ブルース、ヘヴィメタ、ラップなどなど。ただしこの映画、ドキュメンタリーではない。ゴバディはアンダーグラウンドのミュージシャンとの出会いをきっかけに、ドキュメンタリー、フィクション、ミュージックヴィデオ、即興などが融合したユニークな作品を作り上げた(※無許可のゲリラ撮影であったため、ゴバディは祖国を離れることになった)。

バフマン・ゴバディ・インタビュー『ペルシャ猫を誰も知らない』

テヘラン出身のミュージシャンSohrabはこの映画には登場しないが、彼のアルバム『A Hidden Place』にはもうひとつのイランを見出せる。彼が切り拓くエレクトロニック・アンビエントの世界は、アメリカで活動するイラン人批評家ハミッド・ダバシが主張するような多文化的、混合主義的、異種交配的な性格を備えているように思える。

『A Hidden Place』 (2010)

Sohrabは1984年、テヘランに生まれ。兄弟や友だちとパンク・バンドを結成したが、自由な表現や活動が許されず、2年で解散した。そして、孤立した状況のなかで、エレクトロニック・アンビエントの世界を切り拓いた。

Sohrab “A Hidden Place” from Touch on Vimeo.

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『coast range arc』 by Loscil

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カナダの険しい山々にインスパイアされたサウンドスケープ

Loscilは、カナダ出身のエレクトロニック・アンビエントの作曲家Scott Morganのプロジェクトだ。彼はすでに5枚を超える作品を発表しているが、この新作『coast range arc』は、ジャケットアートを見ただけでもテーマが異なることがわかる。

これまでの作品はKrankyからのリリースだったが、新作はGlacial Movements。このイタリアのレーベルは、ジャケットアートも統一され、かなり明確なテーマやカラーを持っている。人類が忘れ去ってしまった場所としての氷の世界を呼び覚まし、独自のサウンドスケープを切り拓こうとするアンビエント・レーベルとでもいえばよいか。

『coast range arc』 (2011)

loscil – coast range arc (album preview) by experimedia

ひと口に氷の世界といっても、ミュージシャンによって様々なアプローチがあるが、Loscilの場合には、具体的なものや場所からインスピレーションを得る傾向が強い。新作も例外ではない。

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