『Adam’s Bushes Eva’s Deep』 by Nasekomix
カメン・カレフ監督のブルガリア映画『ソフィアの夜明け』を観て、ソフィア出身のバンド“Nasekomix”に魅了された人は少なくないはず。この映画には、<Lady Song>と<Inject Love Song (Inject Me With Love)>の2曲が、彼らの演奏シーンとともに挿入されていた。
『Adam’s Bushes Eva’s Deep』は、彼らのデビューアルバム。エレクトロニック、ジャズ、パンク、タンゴなど多様なジャンルを取り込みつつ、無駄を削ぎ落とし、空間を生かすミニマルな音作り。だから、アコーディンやキーボードも担当するAndronia Popovaの囁きかけてくるような、影と透明感のあるヴォーカルが際立ち、独特の親密さを生み出す。
これは『ソフィアの夜明け』の劇場用パンフレットにも少し書いたことだが、カメン・カレフは映画のなかで、バンドのそんな特徴を巧みにとらえ、ドラマの一部にしている。演奏シーンと音楽を単純に挿入するのではなく、その前の別のシーンにまず音楽だけを流し、それから演奏シーンを音楽に重ねる。それが素晴らしいコントラストを生み出す。
<Lady Song>の場合は、イツォとウシュルがタクシーで店に向かうシーンからすでに音楽が流れ出している。タクシーの運転手は、イツォがトルコ人の女性と親しくしているのを快く思っていないから、そこには不穏な空気がある。そして、店の演奏シーンに変わったとき、音楽が生む親密さがより際立つ。
<Inject Love Song>の場合は、ウシュルが去って、イツォが夜のソフィアの街を孤独に彷徨っているところから音楽が流れ出し、映像がライブハウスのシーンに切り換わる。そこで音楽に聴き入るイツォは、ウシュルとの繋がりを感じているように見える。
ヴォーカルのAndronia Popovaは、ソフィアを拠点に活動するステファン・コマンダレフ監督の映画『世界は広い 救いは何処にでもある(原題)』(2011年初夏公開予定)のサントラにも1曲参加している。その曲<Tu Pupila Es Azul>は、ロンドンを拠点に活動するラテン系のバンド“Tumbaito”とのコラボレーションで、彼女はホーンのアンサンブルにのってラテン・ナンバーを歌っている。Nasekomixでもタンゴをやったりしているので、こちらでも曲を苦もなく自分のものにしている。
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Adam’s Bushes Eva’s Deep – Nasekomix
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