『日本の悲劇』 レビュー & 小林政広監督インタビュー
孤立する家族、無縁社会、格差、3.11の悲劇、そして即身仏
遅くなってしまいましたが、8月31日(土)より公開中の小林政広監督の新作『日本の悲劇』に関する告知です。
東京都内で111歳とされる男性のミイラ化した遺体が見つかり、家族が年金を不正受給していた事件は大きな注目を集めました。小林監督が『日本の悲劇』を作るうえでインスパイアされたのは、この年金不正受給事件です。
主人公は、古い平屋に二人で暮らす老父とその息子です。妻子に去られた失業中の息子は、老父の年金に頼って生活しています。そして、自分が余命幾ばくもないことを知った老父は、自室を閉鎖し、食事も水も摂らなくなります。
この映画には、年金不正受給事件のほかに、3.11の悲劇や無縁社会、格差、自殺など様々な要素が盛り込まれています。空間を限定した小林監督の演出や壁一枚を隔てた仲代達矢と北村一輝の鬼気迫る演技も大きな見所です。
しかし、筆者が最も印象に残ったのは、即身仏という要素でした。小林監督がインスパイアされた事件にそういう要素があったとしても、普通は切り捨てたくなるところです。興味本位に見られかねないからです。それでも小林監督はこの要素を盛り込み、説得力を生み出しています。
ちなみに筆者は二度、即身仏を拝んだことがありますが(別ブログの「酒田の土門拳記念館と海向寺の即身仏」で触れています)、その世界に通じるものすら感じました。
「CDジャーナル」9月号にこの映画のレビューを、「宝島」の10月号に小林政広監督のインタビュー記事を書いていますので、ぜひお読みください。