『プレイ』 『最強のふたり』 『デタッチメント』 『哀しき獣』 試写

試写室日記

22日から始まるTIFF(東京国際映画祭)の上映作品を4本。

『プレイ』 リューベン・オストルンド

スウェーデンのリューベン・オストルンド監督が実話にインスパイアされて作り上げた作品。タイトルの『プレイ』が示唆するものは、ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム(Funny Games)』に呼応しているともいえるし、マチュー・カソヴィッツの『憎しみ』の世界をハネケ的な分析と表現で描いた作品のようでもある。

生理的に拒絶反応を起こすような表現も盛り込まれており、賛否両論あるかと思うが、筆者は引き込まれた。シェルビー・スティールが『黒い憂鬱』で提起しているような問題とも絡む要素がある。

『最強のふたり』 エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ

フランスの脚本家兼監督のコンビが実話をもとに作り上げた作品。パラグライダーの事故で首から下が不随になった裕福な貴族フィリップは、自分の介護者として刑務所から釈放されたばかりの若い男ドリスを雇う。

これまで雇った介護者たちは、気難しい貴族におそれをなして逃げ出した。首から下の感覚を失った貴族は、腫れ物にさわるような周囲の扱いによって身体だけではなく世界の感覚まで失いかけている。だが、黒人の若者は、ずけずけとものを言い、感情を露にする。理解は摩擦から生まれる。二人の役者も素晴らしい、愛すべき映画。

『デタッチメント』 トニー・ケイ

『アメリカン・ヒストリーX』のトニー・ケイ監督作品。臨時教師ヘンリー(エイドリアン・ブロディ)の目を通して描き出されるパブリック・スクールの現実。学園ものだが、人物の造形、物語、回想を交えた構成など、パターンにはまらず新鮮。経営状態の悪いパブリック・スクールをひとつの生き物としてとらえ、その生と死を描き出すような視点も非常に印象に残る。

TONY KAYE’S DETACHMENT – EXCLUSIVE FIRST LOOK from DETACHMENT on Vimeo.

『哀しき獣』 ナ・ホンジン

『チェイサー』のときもうなったが、いやー、ナ・ホンジン、恐るべし。中国の朝鮮族の世界というと『キムチを売る女』が真っ先に思い出されるが、その題材からこのような物語を紡ぎ出すとは。筆者は、たとえば『チャーミング・ガール』『美代子阿佐ヶ谷気分』などで、デイヴィド・B・モリスの『痛みの文化史』を参照しつつ、痛みの重要性に言及してきたが、その痛みを自覚的にここまで深く掘り下げられるナ・ホンジンはやはりすごい。

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