『プリズナーズ』 劇場用パンフレット&サントラ

News

過去や罪に囚われた者たちの運命を分ける、偶然と信仰心

すっかり告知したものと思い込んでいたためにこんなに遅くなってしまいましたが、5月3日より公開中の『プリズナーズ』の劇場用パンフレットに上記のようなタイトルで作品評を書いています。

監督は、『渦』『灼熱の魂』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。ちなみに、彼が『プリズナーズ』につづいて監督したジョゼ・サラマーゴの同名小説の映画化『複製された男』も7月18日より公開になります。

『プリズナーズ』は誘拐事件を軸に展開していきますが、その顛末を描くストーリーを追うだけでは魅力は伝わらないと思います。ヴィルヌーヴは、具体的ではなく暗示的、あるいは象徴的な表現を駆使して登場人物たちの過去や内面を想像させ、奥深いドラマを生み出しているからです。たとえば、娘を誘拐される父親は、最初は堅実で信念を持った人物のような印象を与えますが、彼を取り巻く状況が見えてくると、矛盾を抱えていることが明らかになります。パンフの原稿では、そうした過去や内面をめぐるドラマの部分を掘り下げています。


さらに、パンフの原稿では触れる余裕がありませんでしたが、アイスランドの作曲家/マルチインストゥルメンタリスト、ヨハン・ヨハンソンが手がけたサントラもオススメです。

サントラでまず注目したいのは、Thomas Blockが演奏しているオンド・マルトノ(Ondes Martenot)とクリスタル・バスケット(Cristal Baschet)です。このふたつの楽器の独特の響きが、弦と木管のアンサンブルだけでは出せない空気をかもし出しています。

ヨハンソンは、アコースティックとエレクトロニクスを緻密に組み合わせ、静謐にして深遠なサウンドスケープを生み出しています。また、映画に漂う宗教性と響き合うように、パイプ・オルガンも弾いています。アルバム『Without Sinking』などで異彩を放つチェリスト、Hildur Guonadottirも参加し、ソロをとっているのも注目です。