『ハングリー・ラビット』 『キラー・エリート』 『モバイルハウスのつくりかた』 試写
- アメリカ, オーストラリア, ガイ・ピアース, クライヴ・オーウェン, ゲイリー・マッケンドリー, ザンダー・バークレー, ジェイソン・ステイサム, ドキュメンタリー, ニコラス・ケイジ, ロジャー・ドナルドソン, ロバート・デ・ニーロ, 坂口恭平, 日本, 映画監督, 本田孝義, 3・11以後
本日は試写を3本。
『ハングリー・ラビット』 ロジャー・ドナルドソン
ニコラス・ケイジ主演最新作。妻を暴行された高校教師ウィル(ニコラス・ケイジ)が、哀しみと怒りに駆られて、サイモンと名乗る謎の人物(ガイ・ピアース)からの“代理殺人”という提案を受け入れ、次第に泥沼にはまっていく。
マルディグラに始まり、スーパードームにおけるモンスター・トラック・ラリーを経て、ハリケーン・カトリーナによって閉鎖に追い込まれたモールで最後の山場を迎えるというように、ニューオーリンズという舞台が不可欠の要素になっている。
同じくケイジ主演で、ニューオーリンズが舞台の『バッド・ルーテナント』(09)と比較してみると面白いだろう。
筆者は、アンドレイ・コドレスクの『Hail Babylon!: American City at the end of Millennium』やマイケル・エリック・ダイソンの『カトリーナが洗い流せなかった貧困のアメリカ』に描かれたニューオーリンズを思い出しながら映画を観ていた。ニューオーリンズに相応しい物語といえる。
『キラー・エリート』 ゲイリー・マッケンドリー
1980年代初頭。精鋭ぞろいの元SAS(イギリス陸軍特殊部隊)隊員3名の命を狙う凄腕の殺し屋ダニー(ジェイソン・ステイサム)、かつての師匠兼パートナーであるハンター(ロバート・デ・ニーロ)と、謎の組織“フェザー・メン”が差し向けた元SAS隊員である凄腕の刺客スパイク(クライヴ・オーウェン)との壮絶な死闘。
元SAS隊員のラヌルフ・ファインズが書いた同名小説の映画化。銃を構えるステイサム、デ・ニーロ、オーウェンの男臭いポスターのイメージから、これでもかとばかりにアクションで押しまくる映画を勝手に想像していたのだが、彼らの死闘の背後では、イギリスとアラブの権力者たちが、石油が生む利権をめぐって駆け引きを繰り広げていて、そのコントラストが見所になっている。
『モバイルハウスのつくりかた』 本田孝義
先日の試写室日記で触れた堤幸彦監督の『MY HOUSE』、そして『ニュータウン物語』(03)や『船、山にのぼる』(07)の本田孝義監督のこの新作。坂口恭平(『0円ハウス』、『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』ほか)を題材にした映画が、相次いで公開されるというのは、未来のない現代生活をいかにリセットするかという課題が重要になっているからだろう。
『モバイルハウスのつくりかた』は、『MY HOUSE』のような劇映画ではなくドキュメンタリーである。映画のいちばんの見所は、坂口恭平の初の建築作品“モバイルハウス”の製作だ。ホームセンターで購入した材料はしめて2万6千円。二畳の家に移動用の小さな車輪がつく。多摩川の河川敷で誕生したモバイルハウスは、設置場所である吉祥寺の駐車場に移動していく。
多くの人の関心が坂口恭平の世界に向かうと思うが、筆者は本田監督の『船、山にのぼる』のことを思い出していた。あの映画では、ダム建設のために伐採される木の一部を材料として筏状の船を作り、ダム完成後の湛水実験における水位の変化を利用して、それを山のてっぺんに着地させる。
考えてみると『船、山にのぼる』もこの新作も、材料とそこから生まれる作品とその意外性のある動きと設置場所とのユニークな関係性が鍵を握り、映画を成り立たせているといえる。そんなところにも興味をそそられた。