『RIVER』 『NINIFUNI』 試写
本日は試写を2本。
『RIVER』 廣木隆一
秋葉原の無差別殺傷事件で恋人を失ったヒロインが、秋葉原で恋人の痕跡をたどり、様々な人物との出会いを通して次第に立ち直り、未来に踏み出していく。
秋葉原の事件を題材にした作品で筆者が思い出すのは、佐々木友輔監督の『夢ばかり、眠りはない』だ。あの映画では、事件へのこだわりや、それを題材にする必然性が感じられたし、秋葉原から取手の郊外へと視点が移行していく展開にも説得力があった。
この『RIVER』の場合は、その必然性が弱い。事件は、秋葉原を舞台にした世代論的なドラマを描くためのきっかけにとどまっている。どうしてもこの事件でなければ表現できない喪失と再生の物語になってはいない。それを東日本大震災の被災地の光景と接続してしまうと、さらに焦点がぼやける。
『NINIFUNI』 真利子哲也
2年前に公開された真利子哲也監督の長編デビュー作『イエローキッド』については、宣伝部のリクエストに応えてこんなコメントを書いた。
「ふたりの主人公の間で、“ボクサー”と“ヒーロー”と“イエローキッド”と“絶望した孤独な男”が融合と分裂を繰り返し、つかみどころのない時空と強烈なダイナミズムが生み出される」
42分の中編『NINIFUNI』にはまた違ったインパクトがある。真利子監督と、『今、僕は』の監督・主演で注目された竹馬靖具の共同脚本がどういう世界を切り拓くのか楽しみにしていたが、確かに双方の個性が出ているように感じた。
厳密に分けることなどできないが、ゲームセンターの強盗から、若者が国道沿いの殺伐とした郊外を彷徨う前半、台詞や説明を排除して風景と身体と表情だけで表現しようとするあたりは竹馬ワールドを思わせる。ももいろクローバーが出てきて、空間が分裂するというか、歪んでいく後半は真利子ワールドに近い。
単独ロードショーでも十分に勝負できる作品。
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