『ツリー・オブ・ライフ』試写
本日は試写を1本。
『ツリー・オブ・ライフ』 テレンス・マリック
『ニュー・ワールド』(05)以来となるテレンス・マリックの待望の新作。ブラッド・ピット、ショーン・ペン主演。宇宙や太古の自然、生命などの映像にはそれほど心を動かされなかった。しかし、50年代の日常のドラマには、異様な凄みがある。
筆者はだいぶ前から、マリックが50年代以降の世界に深く絶望し、そこで失われたものを呼び覚まそうとしているように感じていた。
マリックの『シン・レッド・ライン』(98)のプロモーションで来日したジム・カヴィーゼル(C中隊のウィット二等兵役)にインタビューしたとき、彼に尋ねても無駄とは思いつつ、マリックの世界観についての個人的な印象を話してみた。するとこんな答えが返ってきた。
「マリックと親しい演技コーチによれば、マリックは20世紀のなかで大恐慌の時代が、生活は貧しかったが愛が最も豊かだった時代だと考えていて、『地獄の逃避行』(設定は50年代末)でも大恐慌を生きる若者のイメージを求めていたらしい。そういう意味では新作(『シン・レッド・ライン』)はそんな厳しい時代を乗り越えてきた愛のある若者たちの姿を描いているといえる」
間接的な情報なので本当のところはわからない。だが、『ツリー・オブ・ライフ』には、マリックが50年代以降のなにに絶望し、なにを呼び覚まそうとしているのか、そのひとつの答えが示されているといえる。
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