『In The Mist』 by Harold Budd
デレク・ジャーマン、サイ・トゥオンブリー、死者との交感
ハロルド・バッドは、『Avalon Sutra』でひとたび引退宣言をしたものの、それを撤回し、音楽活動をつづけている。『In The Mist』は、この1936年生まれのコンポーザー/ピアニストの年齢にも関わる境地を感じさせる作品になっている。
全体は、“The Whispers”、“The Gun Fighters”、“Shadows”の三部で構成されている。一部は静謐なピアノ主体、二部ではパーカッシブな要素が入り(といっても基本的なトーンは変わらない)、いくぶん動的になり、三部は静謐なストリング・クァルテットで締めくくられる。
harold budd – in the mist (album preview) by experimedia
そしてこの構成をさらに印象深いものにしているのが故人との繋がりだ。一部の最後の曲<The Art of Mirrors>はデレク・ジャーマンにちなんだ曲に、三部の最後の曲<Mars and the Artist>はサイ・トゥオンブリーにちなんだ曲になっている。
死を身近なものとしてとらえ、死者と交感し、アーティストとアートの関係に思いを馳せる作品と見ることもでるだろう。
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