『Those Who Didn’t Run』 by Colin Stetson

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息を呑む超絶技巧に磨きをかけ、トランスの世界を切り拓く

以前はコリン・ステットソンについて書くのに、トム・ウェイツやArcade FireやBon Iverのアルバムやツアーに参加しているサックス奏者のような前置きをしなければならなかったが、このブログでも取り上げたアルバム『New History Warfare Vol. 2: Judges』(11)がVol.1以上に大きな評判になって、どうやらその必要もなくなったようだ。

vimeoやYouTubeに演奏の映像が出たことも大きかったのだろう。なにも知らずにステットソンのアルバムを聴いたら、エフェクターかテープかオーバーダブかなにかで音を作っていると思ってしまうはずだから。ちなみにステットソンの超絶技巧を知らずにこのページに来てしまった方は、ひとまず『New History Warfare Vol. 2: Judges』←こちらに貼ったvimeoの演奏をご覧になってから戻ってきてください。

"Those Who Didn't Run" by Colin Stetson

で、『New History Warfare Vol. 2: Judges』につづくEP『Those Who Didn’t Run』が出た。これがまたいい、明らかに進化していて。

Those Who Didn’t Run E.P. – COLIN STETSON by Constellation Records


『New History Warfare Vol. 2: Judges』に収められた曲は、長くても5分強で、平均するとおそらく2分台になる。このEPの2曲はどちらも10分強。『New History of Warfare, Vol. 1』(08)の方には、8分強とか11分の曲もあったが、音楽が目指しているものが違うし、テクニックが可能にする音の領域が違う。

身体と楽器の間のブレがより少なくなり、一体化した状態で、独自のトランス・ミュージックを目指している。本人は”long-form trance / transcendental explorations”という表現を使っているようだ。

これは同じ単独のパフォーマンスでも、たとえばジュリア・ケント(Julia Kent)がエフェクターでループを生み出しながら、チェロの重層的な空間を構築していくのとは、(良い悪いということではなく)サウンドスケープがもたらすものが違う。

まだブログに書いていないが、ウィリアム・パーカー(William Parker)がソロ・ベースをやるときに生まれるトランス感覚を思い出したりもする。ジャズの一回性と反復の相乗効果(もちろん音楽性とテクニックもだが)といえばよいか。どこまで進化するのか非常に楽しみ。

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