今週末公開オススメ映画リスト2012/08/02

週刊オススメ映画リスト

今回は『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』と『トガニ 幼き瞳の告発』の2本です。

『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』 長谷川三郎

広島の被爆者を筆頭に、学生運動、三里塚闘争、自衛隊、公害、祝島、原発などに迫った福島菊次郎の写真とブレのない彼の姿勢は、弱い立場にある人々を見離し、その事実を覆い隠した土台のうえに日本の戦後があることを思い知らせる。そんな嘘の上に暮らすことには我慢がならない。だから彼は国の世話になることを拒み、無人島で自給自足の生活をしようとした。

昨年の夏、筆者は鳥海山に登ったあとで、酒田にある土門拳記念館に立ち寄った。7/13から9/28までは、「古寺巡礼―土門拳仏像十選―」とともに「ヒロシマ」の写真が展示されていた。その写真を見つめていた人たちは、それぞれにフクシマのことを考えていたに違いない。

この映画では、福島菊次郎と被爆者・中村杉松さんの関係を通して、そしてその関係を宿命のように背負った福島の眼差しや情念や身体を通して、ヒロシマとフクシマが生々しく重なっていく。

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『トガニ 幼き瞳の告発』 『苦役列車』 『ギリギリの女たち』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『トガニ 幼き瞳の告発』 ファン・ドンヒョク

試写を観る前に漠然と想像していた作品とは違っていた。これは、いい意味で、ということだ。筆者は、実際に起こった事件をリアルに描き、立場の弱い少年少女たちに性的虐待を行っていた加害者たちを糾弾、告発する作品を想像していた。

実際に作品を観た人は、まさにそういう映画ではないかと思うかもしれない。確かに、少年少女の痛みや恐怖、不安がひしひしと伝わってくるリアルなドラマであり、心を揺さぶる告発になっている。しかし、後半に入ると別の要素が見え隠れするようになる。

韓国の軍事主義については、イム・サンス監督の『ユゴ 大統領有故』やユン・ジョンビン監督の『許されざるもの』のレビューなどで触れているが、この映画でも内面化された軍事主義が意識されているように思える。そこに告発とは違う視野の広がりや深みがある。詳しいことはあらためてレビューで。

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『ハングリー・ラビット』 『キラー・エリート』 『モバイルハウスのつくりかた』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『ハングリー・ラビット』 ロジャー・ドナルドソン

ニコラス・ケイジ主演最新作。妻を暴行された高校教師ウィル(ニコラス・ケイジ)が、哀しみと怒りに駆られて、サイモンと名乗る謎の人物(ガイ・ピアース)からの“代理殺人”という提案を受け入れ、次第に泥沼にはまっていく。

マルディグラに始まり、スーパードームにおけるモンスター・トラック・ラリーを経て、ハリケーン・カトリーナによって閉鎖に追い込まれたモールで最後の山場を迎えるというように、ニューオーリンズという舞台が不可欠の要素になっている。

同じくケイジ主演で、ニューオーリンズが舞台の『バッド・ルーテナント』(09)と比較してみると面白いだろう。

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『MY HOUSE』 『まだ、人間』 試写+『アトモスフィア』上映会

試写室日記

本日は銀座近辺で試写を2本観たあとで、新宿眼科画廊で開かれた上映会に参加した。まったくの偶然だが、3本ともそれぞれに日本の現在、日常を強く意識した作品だった。

『MY HOUSE』 堤幸彦

堤監督がエンターテインメント大作とはまったく違うタイプの作品に挑戦。自分の意思でホームレスという生き方を選び、厳しい環境を受け入れつつも、都会に順応して軽やかに生きる主人公を通して、私たちの日常を見直す。音楽なしのモノクロ映画で、台詞も最小限といえるところまで削ぎ落とされている。

筆者が最も興味を覚えたのは、人物のコントラストを意識したドラマの構成だ。主人公のホームレスと普通の家族を対置させるような表現は不思議ではない。この映画では、主人公の可動式の家と郊外の小奇麗な一戸建てが対置される。その一戸建てには平均的な家族が暮らしているように思いたくなるが、この映画の場合はそうではない。

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『Impressions of Tokyo: Ancient City of the Future』 by Richie Beirach



Listning

東京点描と3・11以後、個人的な記憶と文化的記憶について

久しぶりにリッチー・バイラークのピアノを聴いた。Outnoteというレーベルの“Jazz and the City”というシリーズの一作。それぞれのアーティストが縁のある都市を選び、ソロで表現する。これまでにEric Watsonの『Memories of Paris』、Kenny Warnerの『New York – Love Songs』、Bill Carrothersの『Excelsior』といったアルバムがリリースされている。

バイラークが選んだのは東京。ジャケットには「東京点描」や「未来を映す古都」という日本語も刻み込まれている。全16曲のなかには、バイラークと交流があった日本のアーティストへの思いを込めた<Takemitsu-san>や<Togashi-san>、日本文化を題材にした<Kabuki><Zatoichi-Kurosawa><Rock Garden>といった曲が盛り込まれている。

『Impressions of Tokyo』

そうした曲のなかに、少し違和感を覚える曲名があった。14曲目の<Tragedy in Sendai>だ。この曲名は明らかに東日本大震災のことを意味しているが、このアルバムはいつレコーディングされたのだろうか。

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