イエジー・スコリモフスキ 『エッセンシャル・キリング』 レビュー

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故郷喪失者はどこでもない場所で、動物性への帰郷を果たす

17年ぶりに監督した『アンナと過ごした4日間』(08)で見事な復活を遂げたポーランドの鬼才イエジー・スコリモフスキ。待望の新作はアフガニスタンにおける戦闘から始まり、最初は9・11以後のテロとの戦いを描く作品のように見える。

バズーカ砲で米兵を吹き飛ばした主人公は、米軍に拘束されて捕虜になり、拷問を受け、軍用機と護送車で移送される。ところが、深夜の山道で事故が起き、彼だけが逃走する。

この逃亡劇によって映画の世界は大きく変化していく。そんな流れは筆者に、ジム・ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』を想起させる。この映画の三部構成は実によくできていた。

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『Samdhi』 by Rudresh Mahanthappa

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エレクトリック・ミュージックとの境界に“マジックアワー”を探る

インド系アメリカ人のサックス奏者Rudresh Mahanthappaの多面的な活動については、「Rudresh Mahanthappaが切り拓くハイブリッドな世界」に書いたが、その最後のところで少しだけ触れたニューアルバム『Samdhi』がリリースされている。このプロジェクトは、2008年にMahanthappaがグッゲンハイム奨学金を獲得したことがきっかけで生まれ、これまでとは編成が異なるバンドが結成され、このアルバムに結実した。

メンバーと楽器の構成は、Mahanthappa(アルトサックス、ラップトップ)、David Gilmore(エレクトリック・ギター)、Rich Brown(エレクトリック・ベース)、Damion Reid(ドラムス)、”Anand” Anatha Krishnan(ムリダンガム、カンジーラ)。↓今回は自身の音楽のルーツとして、よりファンキーでエレクトリックな音楽、グローバー・ワシントンJr.やデヴィッド・サンボーンやブレッカー・ブラザーズの名前を挙げているところが、意外でもあり新鮮でもある。

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『ミラノ、愛に生きる』 『ラビット・ホール』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『ミラノ、愛に生きる』 ルカ・グァダニーノ

故デレク・ジャーマン作品のミューズ、『フィクサー』でアカデミー助演女優賞を獲得したティルダ・スウィントンが、主演だけではなく企画の段階から深く関わり、プロデュースも手がけている作品だが、これは素晴らしい。先日観た『灼熱の魂』も圧倒されたが、こちらはまた別の意味ですごい。引き込まれた。

Bunkamura ル・シネマのリニューアルオープニング作品ということで、ミラノの上流社会とかファッションとかメロドラマとか、それらしいカラーに染められた世界にはなっているが、まったく違った見方ができる。

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アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 『BIUTIFUL』 レビュー

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複数の境界が交差する場所に立つ男、その孤独な魂の震え

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの新作『BIUTIFUL』は、表現や構成がこれまでの監督作とは違う。複数の物語を断片化し、再構築するようなスタイルは見られない(『アモーレス・ペロス』『21グラム』、イニャリトゥとコンビを組んでいたギジェルモ・アリアガ『あの日、欲望の大地で』のレビューをお読みいただければ、筆者がこれまでの彼のスタイルに好感を持っていなかったことがおわかりいただけるだろう)。

主人公はスペインの大都市バルセロナの底辺で生きる男ウスバル。妻と別れ、男手ひとつで二人の子供を育てている彼がある日、末期がんで余命2ヶ月と宣告される。

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ジョエル&イーサン・コーエン 『シリアスマン』 レビュー

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不運を嘆き、考え込むのではなく、笑いに転化して前に進む

コーエン兄弟の『シリアスマン』は、これまでの彼らの作品と違った印象を与えるかもしれない。それは、ユダヤ系の家族やコミュニティのドラマにこの兄弟のバックグラウンドが反映されているからだ。しかし、ユダヤの文化や慣習を理解していなければ楽しめないということはない。この映画は、ひとつのことを頭に入れておけば、たっぷり楽しむことができる。

たとえば、ユダヤ文学には、シュレミール(schlemiel)やシュリマゼル(schlemazel)というように表現される人物像が頻繁に登場する。それらは、なにをやっても裏目に出るドジな人物や災いばかりが降りかかるどうにもついてない人物を意味する。コーエン兄弟にとってこうした人物像は身近なものであるはずだ。

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