アスガー・レス 『崖っぷちの男』 レビュー

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先読みできないサスペンスにユーモアを交えて描く
痛快 “交渉人” 映画

アスガー・レス監督の『崖っぷちの男』は、冒頭からいきなり私たちを緊張感と臨場感が際立つ状況に引き込む。ルーズヴェルト・ホテルにウォーカーと名乗ってチェックインした男が、部屋の窓から壁面の縁に降り立つ。男の存在に気づいた通行人は、自殺志願者に違いないと思い、足を止めて騒ぎ出す。マスコミが駆けつけ、警察が道路を封鎖する。

しかし、私たち観客には、男が自殺しようとしているのではないことがわかってくる。シンシン刑務所に服役していた主人公ニック・キャシディは、元相棒の刑事の計らいで父親の葬儀に参列したあと、見張りの警官の隙を突いて逃走する。それは偶発的な出来事のように見えるが、間もなくそうではないことが明らかになる。追跡を振り切ったニックがたどり着いた倉庫には、クレジットカードや現金などが用意されていたからだ。

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『崖っぷちの男』 劇場用パンフレット

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高所の臨場感と先の読めないサスペンス、7月7日(土)公開

ニューヨークのルーズヴェルト・ホテルにウォーカーと名乗ってチェックインした男が、部屋の窓から壁面の縁に降り立つ。地上60メートル、幅35センチの崖っぷち。男に気づいた通行人は自殺志願者だと思い、マスコミが駆けつけ、警察が道路を封鎖する。しかし男にとって、その場所に立ち、自殺志願者を装うことは周到な計画の一部に過ぎなかった。

“崖っぷちの男”を演じるのは、『アバター』のサム・ワーシントン。彼が指名する交渉人リディアにエリザベス・バンクス。ポール・ハギスの『スリーデイズ』にこの作品と、ここのところ存在感を放つようになってきた。『ハンガー・ゲーム』にも出ているし。『ジェーン・エア』の演技が記憶に新しいジェイミー・ベルが、お色気ムンムンのジェネシス・ロドリゲスとのコンビで、まったく違ったキャラを演じている。エド・バーンズもリディアの同僚役でなかなかいい味を出している。

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ポール・ハギス 『スリーデイズ』 レビュー

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代償は高くても自由を求める意味を考える

ポール・ハギスがアメリカ映画界で成功を収めるきっかけは、クリント・イーストウッド監督の『ミリオンダラー・ベイビー』(04)の脚本を手がけたことだった。F・X・トゥールの短編集『テン・カウント』(文庫のタイトルは『ミリオンダラー・ベイビー』)を原作にしたこの脚本には、ハギスの思いや独特の人生観を見出すことができる。

1953年、カナダ・オンタリオ州生まれのハギスは、20代でハリウッドにたどり着き、テレビの世界に入ってこつこつと経験を積み重ね、脚本家としての地位を築き上げた。しかしそれはあくまでテレビ界における評価だった。彼の夢は劇映画の脚本を書き、監督することだった。そこで、世紀が変わろうとするころ、40代後半にさしかかっていた彼は、だめもとで劇映画の脚本を書き出した。それが『ミリオンダラー・ベイビー』だった。

この映画に登場するヒロイン、マギーは、13歳からずっとウェイトレスとして働き、30代になってもボクシングのトレーニングを続けている。ハギスがそんな彼女に共感を覚えても不思議はないだろう。だが、彼が作り上げたのは、スポ根ものの成功物語ではない。

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