今週末公開オススメ映画リスト2013/03/07

週刊オススメ映画リスト

今回は『メッセンジャー』『愛、アムール』『魔女と呼ばれた少女』『野蛮なやつら/SAVAGES』(順不同)の4本です。

『メッセンジャー』 オーレン・ムーヴァーマン

今回のリストのなかで、この作品についてはノーマークという人が少なくないのではないでしょうか。2009年製作の作品ですが、いろいろ賞にも輝いていますし、正直、なぜすぐに公開されなかったのか不思議に思いました。

イラク戦争という題材については、『告発のとき』『ハート・ロッカー』『グリーン・ゾーン』『バビロンの陽光』『フェア・ゲーム』『ルート・アイリッシュ』など、様々な監督が様々な切り口から描いていますが、これはその盲点をつくような作品といっていいでしょう。

戦死者の遺族に訃報を伝える任務を負うメッセンジャーの世界が描かれています。ベン・フォスターとウディ・ハレルソンがメッセンジャーに、サマンサ・モートンが夫を喪った母親に扮しています。出番は多くないですが、スティーヴ・ブシェミも息子を喪った父親の役で出てきます。

「CDジャーナル」2013年3月号の新作映画のページでレビューを書いています。こういう映画はもっと注目されていいと思います。

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ミハル・ボガニム 『故郷よ』 レビュー

Review

チェルノブイリの悲劇――故郷の喪失や記憶をめぐる複雑な感情を独自の視点から掘り下げる

昨年(2012年)公開されたニコラウス・ゲイハルター監督の『プリピャチ』(99)は、「ゾーン」と呼ばれるチェルノブイリ原発の立入制限区域(30キロ圏内)で生きる人々をとらえたドキュメンタリーだった。“プリピャチ”とは、原発の北3キロに位置する町の名前であり、そこを流れる川の名前でもある。

そのプリピャチを主な舞台にした女性監督ミハル・ボガニムの『故郷よ』は、ゾーンで撮影された初めての劇映画だ。物語は事故当時とその10年後という二つの時間で構成されている。

結婚式を挙げた直後に事故が発生し、消防士の夫を喪ったアーニャは、ゾーンのツアーガイドとなって故郷に留まっている。事故後に原発の技師だった父親が失踪し、別の土地で育った若者ヴァレリーは、故郷に戻って父親を探し回る。その父親は、もはや存在しないプリピャチ駅を目指して列車に揺られ、迷子になったかのように終わりのない旅を続けている。

ボガニム監督は当事者への入念なリサーチを行い、事故当時の模様やその後の生活をリアルに再現している。しかし、彼女が関心を持っているのは必ずしも原発の悲劇だけではない。

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『君と歩く世界』 試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『君と歩く世界』 ジャック・オディアール

昨年の後半は『70年代アメリカ映画100』の作業にずいぶん時間を費やし、読みかけの本、書きかけの原稿、調べかけのテーマなどなど、中途半端になっているものの遅れを取り戻すので精一杯で、新作映画の情報に疎くなっている。この作品もまったくのノーマークだった。

マリオン・コティヤール主演。試写状で、両脚を失ったシャチの調教師であるヒロインが、普通とは違う男に出会って、再生を果たしていくというようなアウトラインだけを確認して、よくあるお涙頂戴映画だったらいやだなと思いつつ試写に出向いた。実は監督がジャック・オディアールであることも映画を観て知った(試写状は、マリオン・コティヤールの名前だけがやけに大きかったような気がする)。

映画の冒頭で社会の底辺を這いずるような父親と息子の姿を見て、瞬時に背筋がピンと伸び、貧しさのなかで生きることから生まれる軋轢や闘争心がむき出しになるヒリヒリするような世界に引き込まれた。いい、すごくいい。誤解を恐れずに書けば、そんな世界のなかでは、両脚を失ったヒロインがそれを意識することが、あたかもナルシズムのように見えてしまうといっても過言ではない。

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レア・フェネール 『愛について、ある土曜日の面会室』 レビュー



Review

三角形から引き出された複雑な感情が、面会室を緊張に満ちた濃密な空間に変える

フランス映画界の新鋭女性監督レア・フェネールの長編デビュー作『愛について、ある土曜日の面会室』では、マルセイユを舞台に三つの物語が並行して描かれ、最後に交差する。

サッカーに熱中し、ロシア系移民の若者と恋に落ちた少女ロール、仕事がうまくいかず恋人との諍いが絶えないステファン、息子の突然の死を受け入れられず、アルジェリアから息子が殺されたフランスにやってきたゾラ。そんな3人の主人公は、予期せぬ出来事や偶然の出会いなどによって、ある土曜日に同じ刑務所の面会室を訪れる。

こうした構成はひとつ間違えば、図式的で表面的なドラマになりかねない。面会室を訪れる人物と収監されている人物の関係がどのようなものであれ、その1対1という動かしがたい関係を軸に多様なドラマを生み出すのは簡単ではないように思えるからだ。

しかし、この映画では登場人物たちの複雑な感情が実に見事に炙り出されている。3人の主人公の世代や立場はまったく異なるが、彼らのドラマにはある共通点がある。鍵を握るのは三角形だ。1対1の関係にもうひとりの他者が絡むことによって多面的な視点や奥行きが生まれるのだ。

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今週末公開オススメ映画リスト2013/02/07

週刊オススメ映画リスト

今回は『故郷よ』『ムーンライズ・キングダム』『命をつなぐバイオリン』の3本です。

『故郷よ』 ミハル・ボガニム

チェルノブイリ原発の立入制限区域(30キロ圏内)で劇映画を撮るというのは、許可を得るのにも煩雑な手続きが必要になるでしょうし、キャストもそれなりの覚悟が必要になると思います。

ミハル・ボガニム監督は、ヒロインにオリガ・キュリレンコを起用したことについて、プレスのインタビューで以下のように語っています。

オリガ・キュリレンコはウクライナ人です。彼女は子供の時に起きた事故のことをとてもよく覚えていました。彼女はまさにアーニャ自身でした。「アーニャは私です」と彼女は言ってくれましたが、始まるまで私はほんの少しそのことを疑っていました。というのは、彼女は美しすぎるからです。それで、私は彼女を起用するより無名の誰かを準備した方がいいと考えオーディションをしましたが、参加してくれたオルガの演技が印象に残りました。その印象をもとに彼女とアーニャを作っていきました

そのキュリレンコは、テレンス・マリック監督の新作『To the Wonder』(12)にも出演していますね。

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