ファン・ドンヒョク 『トガニ 幼き瞳の告発』 レビュー



Review

告発のドラマが炙り出す内面化された“軍事主義”

2005年に韓国のある聴覚障害者学校で信じがたい事件が発覚した。2000年から6年もの間、校長を始め教員らが複数の生徒たちに性的虐待を行っていた。『トガニ 幼き瞳の告発』は、この事件を題材にしたベストセラー小説の映画化だ。

美術教師カン・イノが恩師の紹介で赴任した田舎町の聴覚障害者学校は、校長の双子の弟の行政室長が平然と賄賂を要求したり、生徒たちが何かに怯えているなど、最初から不穏な空気を漂わせていた。

イノは寮長から過度の体罰を受けていた女生徒を病院に運んだことをきっかけに性的虐待の事実を知る。怒りに駆られる彼は、マスコミを利用して非道を正そうとするが、裁判をめぐって困難な壁が次々と立ちはだかる。

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今週末公開オススメ映画リスト2012/08/02

週刊オススメ映画リスト

今回は『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』と『トガニ 幼き瞳の告発』の2本です。

『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』 長谷川三郎

広島の被爆者を筆頭に、学生運動、三里塚闘争、自衛隊、公害、祝島、原発などに迫った福島菊次郎の写真とブレのない彼の姿勢は、弱い立場にある人々を見離し、その事実を覆い隠した土台のうえに日本の戦後があることを思い知らせる。そんな嘘の上に暮らすことには我慢がならない。だから彼は国の世話になることを拒み、無人島で自給自足の生活をしようとした。

昨年の夏、筆者は鳥海山に登ったあとで、酒田にある土門拳記念館に立ち寄った。7/13から9/28までは、「古寺巡礼―土門拳仏像十選―」とともに「ヒロシマ」の写真が展示されていた。その写真を見つめていた人たちは、それぞれにフクシマのことを考えていたに違いない。

この映画では、福島菊次郎と被爆者・中村杉松さんの関係を通して、そしてその関係を宿命のように背負った福島の眼差しや情念や身体を通して、ヒロシマとフクシマが生々しく重なっていく。

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『トガニ 幼き瞳の告発』 『苦役列車』 『ギリギリの女たち』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『トガニ 幼き瞳の告発』 ファン・ドンヒョク

試写を観る前に漠然と想像していた作品とは違っていた。これは、いい意味で、ということだ。筆者は、実際に起こった事件をリアルに描き、立場の弱い少年少女たちに性的虐待を行っていた加害者たちを糾弾、告発する作品を想像していた。

実際に作品を観た人は、まさにそういう映画ではないかと思うかもしれない。確かに、少年少女の痛みや恐怖、不安がひしひしと伝わってくるリアルなドラマであり、心を揺さぶる告発になっている。しかし、後半に入ると別の要素が見え隠れするようになる。

韓国の軍事主義については、イム・サンス監督の『ユゴ 大統領有故』やユン・ジョンビン監督の『許されざるもの』のレビューなどで触れているが、この映画でも内面化された軍事主義が意識されているように思える。そこに告発とは違う視野の広がりや深みがある。詳しいことはあらためてレビューで。

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