池谷薫監督特集上映:『延安の娘』 『蟻の兵隊』 『先祖になる』



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人間を追いつづけたドキュメンタリーの軌跡

6月8日(土)から6月21日(金)まで2週間限定でポレポレ東中野にて池谷薫監督のドキュメンタリー3作品『延安の娘』『蟻の兵隊』『先祖になる』の特集上映が行われています。

以下、特集上映チラシの池谷監督の言葉

「今回、劇場のご厚意で私の長編ドキュメンタリー3作を上映することができ、とてもうれしく思っています。振り返ってみれば、戦争や震災といった重いテーマで映画をつくってきましたが、私の関心はつねに人間力のある一個人を追いつづけることにありました。
結果として人を撮りつづけることで、国家や社会に翻弄されながらも懸命に生きる、人間の再生の物語を描くことになりました。
今回ご覧いただくのは、そういう3作です。映画をご覧いただき、人間の尊厳とは何か少しでも感じていただければ幸いです」

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クロード・ガニオン 『カラカラ』 レビュー

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禅の世界に通じる喪失と再生の物語

新しい世紀に入って再び日本で映画を作るようになったクロード・ガニオン監督にとって、『カラカラ』(12)は、『リバイバル・ブルース』(03)、『KAMATAKI‐窯焚‐』(05)につづく新作になる。この三作品を対比してみると、新作では前の作品に見られたモチーフがかたちを変えて引き継がれ、掘り下げられていることがわかる。

『リバイバル・ブルース』に登場する健は、かつて親友の洋介とバンドという夢を追いかけたが、堅実な人生を歩む決断をしたことで夢は終わりを告げた。この映画ではそんな健が、末期癌の洋介の最期を看取ることになる。『カラカラ』の主人公ピエールは、二年前に親友を喪った。かつて二人にはソーラーハウスという大きな夢があったが、ピエールはそれを捨て、安定や社会的地位を選んだ。

『KAMATAKI‐窯焚‐』に登場する日系カナダ人の若者ケンは、父親を喪った哀しみから立ち直れず、自殺をはかった。そんな彼は陶芸家である叔父の窯元を訪ね、信楽焼の陶器に言葉では表現しがたいなにかを感じたことがきっかけで、再生を果たしていく。『カラカラ』にも異文化との出会いがある。喪失と死の不安に苛まれるピエールは、沖縄県立博物館で目にした人間国宝・平良敏子が織った芭蕉布になぜか強く惹きつけられていく。

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今週末公開オススメ映画リスト2013/03/21

週刊オススメ映画リスト

今回は『ザ・マスター』『長嶺ヤス子 裸足のフラメンコ』『暗闇から手をのばせ』の3本です。

『ザ・マスター』 ポール・トーマス・アンダーソン

PTAの持つ強烈なオブセッションとそれを映像で表現しきってしまう豪腕ぶりに息をのみます。まずは『ザ・マスター』試写室日記をお読みください。

「キネマ旬報」2013年4月上旬号(3月20日発売)の『ザ・マスター』特集で、監督インタビュー、作品論、監督論につづくかたちで、「『ザ・マスター』とアメリカの50年代」というタイトルのコラムを書いております。ぜひお読みください。

映画はフィクションですが、PTAはサイエントロジーの始まりの時期をかなり詳しく調べ、ランカスター・ドッドという人物を創造しています。試写室日記では、サイエントロジーの実態に迫ったローレンス・ライトの『Going Clear』を取り上げましたが、「キネマ旬報」の原稿では、歴史学者ヒュー・B・アーバンの『The Church of Scientology: A History of a New Religion』を参考にしました。想像にすぎませんが、PTAも参考にしているように思えます。

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大宮浩一 『長嶺ヤス子 裸足のフラメンコ』 レビュー

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見放された犬や猫との触れ合い、瞬間のなかに永遠を見る

最近の「New York Times」で、スペインのフラメンコに関する記事を目にした。その記事は、フラメンコのメッカ、セビリアでフラメンコを教えているダンサー/講師の話から始まる。彼女の教室には10名の女性が通っているが、そのうちスペイン人はひとりだけで、他は日本人、中国人、ドイツ人、イギリス人、デンマーク人、イスラエル人の生徒だという。

10年前には外国人の生徒の比率は4割だったが、9割まで上昇した。その背景には、スペインにおける景気後退や失業率の増加があるようだ。その記事には、フラメンコの存続は国際化にかかっている、という専門家の言葉も引用されている。

昭和11年に福島県に生まれた長嶺ヤス子は、昭和35年に単身スペインに渡った。その当時、フラメンコはスペイン人やロマ(シプシー)が踊るものと考えられ、日本人がステージに立つのはあり得ないことだった。彼女はフラメンコダンサーとして20年間スペインに留まり、帰国後は、和楽、古典を取り入れた創作舞踏により、国際的ダンサーとしての評価を得た。

このドキュメンタリーでは、そんな長嶺の烈しいフラメンコが映し出される。三味線をバックに着物で踊るパフォーマンスは独創的だ。東日本大震災から間もない2011年の春に直腸がんが見つかって入院するものの、手術を経て退院からわずか一ヶ月でステージに立っているその精神力や体力にも驚かされる。

しかし、それだけでは一本の作品としてこの映画に引き込まれることはなかっただろう。

長嶺は30年ほど前のある日、一匹の猫を轢き殺してしまった。そのとき、そのまま猫を置き去りにしようと考えた自分に対して、人間の、自分自身の恐ろしさを感じたことがきっかけで、困っている動物は必ず助けようと決心した。

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トピックス

笑顔がなんとも素敵なこの老人からいま私たちが学べることは決して少なくない

池谷薫監督の新作『先祖になる』は、筆者の心の深いところに響く作品でした。それだけにいろいろ感じるものがあり、ブログにアップしたレビューは長めのテキストになりました。ネットではやはり長文のテキストは敬遠されがちなので、正直、それほど多くの人の目にとまるとは思っていませんでした。

ところが、ベニチガヤさんのような常連さんだけではなく、はじめて来られたと思われる方々が、ときに本文の引用なども交えていろいろツイートしてくださり、PVがどんどん上昇し、びっくりしました。

その後、『先祖になる』公式サイトのfacebookに連動した最新情報でも取り上げていただき、嬉しかったのですが、同時に少々不安にもなりました。冒頭に書いたように、とにかく長文のレビューですから、このレビュー情報だけが浮いてしまうのではと思ったのですが、まさかいいねが3ケタに迫り、コメントまでいただき、またも面食らいました。

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