ミシェル・アザナヴィシウス 『アーティスト』 レビュー

Review

サイレント映画から新たな魅力を引き出す現代的なアプローチ

サイレント映画がなぜそれほど大きな注目を集めるのか? ミシェル・アザナヴィシウス監督の『アーティスト』が世界の映画賞を席巻しているという話題を耳にしたとき、筆者はそんなふうに感じていた。しかし実際に作品を観て、理由がよくわかった。これはかつてのサイレント映画を単純に現代に甦らせただけの作品ではない。そこにはサイレントというスタイルに対する現代的なアプローチが見られる。

筆者がまず面白いと思ったのは導入部の表現だ。映画は、ジョージ・ヴァレンティン主演の新作『ロシアの陰謀』が上映されているところから始まる。私たちはいきなりサイレント映画のなかでもう一本のサイレント映画を目にする。劇中のスクリーンでは、ジョージ扮するヒーローの活躍が描かれる。さらに新作の映像だけではなく、客席の様子も映し出される。そのとき私たちは、観客が息を呑んだり、拍手をしたりする姿から、スクリーンで起こっていることを想像している。

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『アーティスト』 劇場用パンフレット

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サイレント映画から新たな魅力を引き出す現代的なアプローチ

第84回米アカデミー賞で、作品賞、監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス)、主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)など5冠に輝いたサイレント映画『アーティスト』。4月7日より全国ロードショー公開になるこの作品の劇場用パンフレットに上記のタイトルで作品評を書いております。

実際に作品を観るまでは、サイレント映画がなぜこれほど話題になるのか正直、不思議に思っていましたが、かつてのサイレント映画を現代に甦らせただけの作品ではないし、ハリウッドへのオマージュや、男優と女優のロマンス、芸達者な犬以外にも魅力を持った作品です。

冒頭の新作上映会では、俳優たちが上映後の舞台挨拶のためにスクリーンの裏で待機しているのですが、そこでわざわざ「舞台裏につき私語禁止」という標語を映してみせたときに、これは音や音楽を意識させる巧みな話術が見られそうだと思ったら、本当にそういうことになっていました。

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