ミシェル・ゴンドリー 『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』 レビュー

Review

ヴィアンの『うたかたの日々』のイマジネーションと残酷さをめぐって

『ウィ・アンド・アイ』につづくミシェル・ゴンドリーの新作は、夭逝の作家ボリス・ヴィアンの悲痛な恋愛小説『うたかたの日々』の映画化だ。プレスのインタビューでゴンドリーは、原作を最初に読んだ時期について、「10代の頃だね。兄が最初に読んで、僕たち弟に薦めたんだ。間違いなく兄は『墓に唾をかけろ』とか、ボリス・ヴィアンがヴァーノン・サリバン名義で書いた、もっとエロティックな小説から読み始めたはずだね」と語っている。その昔、筆者もヴァーノン・サリバン名義のものから読み出したような気がする。

『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』の舞台はパリで、時代背景は曖昧にされている。それなりの財産に恵まれ、働かなくても食べていける若者コランは、パーティで出会った美しいクロエと恋に落ちる。ふたりは、友人たちに祝福され盛大な結婚式を挙げるが、やがてクロエが、肺のなかに睡蓮が生長する奇妙な病におかされていることがわかる。その治療のために財産を使い果たしたコランは、働きだすが、彼らの世界は徐々に光と精気を失い、荒廃していく。

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『リンカーン』 『ウィ・アンド・アイ』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『リンカーン』 スティーヴン・スピルバーグ

素晴らしいというよりは凄いというべきなのだろう。ある意味、スピルバーグの集大成といってもいいと思う。

この映画の原作となったドリス・カーンズ・グッドウィンの『リンカン』は長い。長いといっても、リンカーンの人生の最後の5年間に絞り込まれているので、一般的な伝記に比べれば扱っている時間ははるかに短いといえるが、映画が扱う時間はそれよりもずっと短い。大胆に切り落とされている。

1864年11月に2期目を目指す大統領選に勝利を収めてから、憲法修正第13条が下院で可決され永久に奴隷制が禁止され、1865年4月に暗殺されるまで。半年にも満たない。南部人の立場もほとんど描かれない。これはひとつ間違えば非常に危険な映画になりかねない。

ジェームズ・M・バーダマンの『ふたつのアメリカ史』に書かれているように、アメリカにはふたつの歴史がある(確か本書の帯には「リンカーンは悪魔である」という言葉が使われていた)。「北部」の見地に立って書かれた歴史が、アメリカ史の通史のように流通しているが、「南部」の見地に立てばもうひとつのアメリカが見えてくる。

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