ミシェル・ゴンドリー 『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』 レビュー
ヴィアンの『うたかたの日々』のイマジネーションと残酷さをめぐって
『ウィ・アンド・アイ』につづくミシェル・ゴンドリーの新作は、夭逝の作家ボリス・ヴィアンの悲痛な恋愛小説『うたかたの日々』の映画化だ。プレスのインタビューでゴンドリーは、原作を最初に読んだ時期について、「10代の頃だね。兄が最初に読んで、僕たち弟に薦めたんだ。間違いなく兄は『墓に唾をかけろ』とか、ボリス・ヴィアンがヴァーノン・サリバン名義で書いた、もっとエロティックな小説から読み始めたはずだね」と語っている。その昔、筆者もヴァーノン・サリバン名義のものから読み出したような気がする。
『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』の舞台はパリで、時代背景は曖昧にされている。それなりの財産に恵まれ、働かなくても食べていける若者コランは、パーティで出会った美しいクロエと恋に落ちる。ふたりは、友人たちに祝福され盛大な結婚式を挙げるが、やがてクロエが、肺のなかに睡蓮が生長する奇妙な病におかされていることがわかる。その治療のために財産を使い果たしたコランは、働きだすが、彼らの世界は徐々に光と精気を失い、荒廃していく。