今週末公開オススメ映画リスト2013/03/07

週刊オススメ映画リスト

今回は『メッセンジャー』『愛、アムール』『魔女と呼ばれた少女』『野蛮なやつら/SAVAGES』(順不同)の4本です。

『メッセンジャー』 オーレン・ムーヴァーマン

今回のリストのなかで、この作品についてはノーマークという人が少なくないのではないでしょうか。2009年製作の作品ですが、いろいろ賞にも輝いていますし、正直、なぜすぐに公開されなかったのか不思議に思いました。

イラク戦争という題材については、『告発のとき』『ハート・ロッカー』『グリーン・ゾーン』『バビロンの陽光』『フェア・ゲーム』『ルート・アイリッシュ』など、様々な監督が様々な切り口から描いていますが、これはその盲点をつくような作品といっていいでしょう。

戦死者の遺族に訃報を伝える任務を負うメッセンジャーの世界が描かれています。ベン・フォスターとウディ・ハレルソンがメッセンジャーに、サマンサ・モートンが夫を喪った母親に扮しています。出番は多くないですが、スティーヴ・ブシェミも息子を喪った父親の役で出てきます。

「CDジャーナル」2013年3月号の新作映画のページでレビューを書いています。こういう映画はもっと注目されていいと思います。

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マルクス・O・ローゼンミュラー 『命をつなぐバイオリン』 レビュー



Review

ナチズムとサディズムのはざま

マルクス・O・ローゼンミュラー監督のドイツ映画『命をつなぐバイオリン』では、台頭するナチスがソ連に侵攻する時代を背景に、ユダヤ人のアブラーシャとラリッサ、ドイツ人のハンナという三人の少年少女の友情が描き出される。

映画の舞台は、1941年春、ソ連の支配下にあるウクライナのモルタヴァ。それぞれバイオリンとピアノで神童と呼ばれるアブラーシャとラリッサは、物語が始まった時点ですでにウクライナの共産党のプロパガンダに利用されている。

ドイツ人のハンナは、父親が経営するビール製造工場がウクライナにあるため、モルダヴァに暮らしている。彼女もバイオリンの才能に恵まれ、憧れの神童たちと次第に友情を育んでいく。だが、そんな三者の絆は、ドイツ軍の侵攻によって翻弄されていく。

この設定は興味深い。ドイツ軍侵攻の知らせが届くと、ポルタヴァ在住のドイツ人は一夜にして敵となり、ハンナの一家は危険に晒される。アブラーシャとラリッサの一家は、そんな彼らを森の廃屋にかくまう。

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『君と歩く世界』 試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『君と歩く世界』 ジャック・オディアール

昨年の後半は『70年代アメリカ映画100』の作業にずいぶん時間を費やし、読みかけの本、書きかけの原稿、調べかけのテーマなどなど、中途半端になっているものの遅れを取り戻すので精一杯で、新作映画の情報に疎くなっている。この作品もまったくのノーマークだった。

マリオン・コティヤール主演。試写状で、両脚を失ったシャチの調教師であるヒロインが、普通とは違う男に出会って、再生を果たしていくというようなアウトラインだけを確認して、よくあるお涙頂戴映画だったらいやだなと思いつつ試写に出向いた。実は監督がジャック・オディアールであることも映画を観て知った(試写状は、マリオン・コティヤールの名前だけがやけに大きかったような気がする)。

映画の冒頭で社会の底辺を這いずるような父親と息子の姿を見て、瞬時に背筋がピンと伸び、貧しさのなかで生きることから生まれる軋轢や闘争心がむき出しになるヒリヒリするような世界に引き込まれた。いい、すごくいい。誤解を恐れずに書けば、そんな世界のなかでは、両脚を失ったヒロインがそれを意識することが、あたかもナルシズムのように見えてしまうといっても過言ではない。

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『クラウド・アトラス』 試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『クラウド・アトラス』 ウォシャウスキー姉弟+トム・ティクヴァ

『ナンバー9ドリーム』で知られるイギリスの作家デイヴィッド・ミッチェルの同名小説の映画化。親交のあるウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァの共同監督・脚本・製作。

1849年の南太平洋、1936年のスコットランド、1973年のサンフランシスコ、2012年のイングランド、2144年のネオ・ソウル、“崩壊”後の2321年と2346年のハワイ。5世紀にわたる6つの物語が、輪廻や足跡によって結びつき、より合わされ、ひとつの大きな流れを形づくっていく。

人間の営みを大きな視野からとらえ直すのであれば、テレンス・マリックの『ツリー・オブ・ライフ』やラース・フォン・トリアーの『アンチクライスト』や『メランコリア』、あるいはリドリー・スコットの『プロメテウス』くらいまでやることが珍しいことではなくなっているので、この構成だけで単純に壮大ということはできない。

もし輪廻を通して広げられる視野はこれで精一杯というような安易で消極的な考えが紛れ込んでいたのだとすれば、逆に半端で小さな世界ということにもなる。この映画がしっかりとした意図をもってその枠組みが設定されているのかどうかは、出発点となる時代である程度、判断ができる。

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今週末公開オススメ映画リスト2013/02/07

週刊オススメ映画リスト

今回は『故郷よ』『ムーンライズ・キングダム』『命をつなぐバイオリン』の3本です。

『故郷よ』 ミハル・ボガニム

チェルノブイリ原発の立入制限区域(30キロ圏内)で劇映画を撮るというのは、許可を得るのにも煩雑な手続きが必要になるでしょうし、キャストもそれなりの覚悟が必要になると思います。

ミハル・ボガニム監督は、ヒロインにオリガ・キュリレンコを起用したことについて、プレスのインタビューで以下のように語っています。

オリガ・キュリレンコはウクライナ人です。彼女は子供の時に起きた事故のことをとてもよく覚えていました。彼女はまさにアーニャ自身でした。「アーニャは私です」と彼女は言ってくれましたが、始まるまで私はほんの少しそのことを疑っていました。というのは、彼女は美しすぎるからです。それで、私は彼女を起用するより無名の誰かを準備した方がいいと考えオーディションをしましたが、参加してくれたオルガの演技が印象に残りました。その印象をもとに彼女とアーニャを作っていきました

そのキュリレンコは、テレンス・マリック監督の新作『To the Wonder』(12)にも出演していますね。

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