パブロ・ベルヘル 『ブランカニエベス』 レビュー
映像と音楽と題材が三位一体となった貴種流離譚
モノクロ&サイレントで撮られたパブロ・ベルヘル監督の『ブランカニエベス』は、闘牛の場面から始まる。それを観ながら思い出したことがある。だいぶ前にスペイン文化について調べ物をしたときに、印象に残ったことのひとつが闘牛における音楽や音の役割だった。それは、ギャリー・マーヴィンの『闘牛 スペイン文化の華』のなかで説明されていた。
たとえば、闘牛を仕切る座長の合図で、楽隊がパソドブレ(闘牛と伝統的に結びついた二拍子のマーチ風舞曲)の演奏を始め、最初の牛が放されるまで続けられるというのは、容易に想像できる音楽の使い方である。しかし、音楽の役割はそれだけではない。座長の合図は、色のついたハンカチで視覚的に表現され、それと同時に、トランペットでも通訳される。さらに以下のような役割も担う。
「音楽はまた、アンビエンテ(雰囲気)を作りだし、アリーナの演技に触発された感情をさらに強める働きをする。音楽だけである程度この気分を作りだすことがある。マタドールは音楽に身を委ねることがあるからである」「アリーナの演技が音楽が演奏されるに値すると思うのに楽隊が何もしないと、観客はすぐに文句をつける」