パオロ・ソレンティーノ 『グレート・ビューティー/追憶のローマ』 レビュー



Review

永遠と喪失の狭間で

スイスにあるホテルを舞台にしたパオロ・ソレンティーノ監督の『愛の果てへの旅』(04)には、ホテルのラウンジで主人公の近くに座っている女性客が彼女の友人に、フランスの作家セリーヌの『夜の果てへの旅』の一節を読んで聞かせる場面があった。『グレート・ビューティー/追憶のローマ』は、同じ小説の冒頭部分の引用から始まる。このセリーヌの言葉はドラマと深く結びついているが、まず注目したいのは旅への言及だ。

ソレンティーノは、主人公の内なる旅を繰り返し描いてきた。ある事情で8年もホテルに幽閉されている『愛の果てへの旅』の会計士、寝たきりの母親と暮らす『家族の友人』(06)の高利貸し、ダブリンで世捨て人のように暮らす『きっと ここが帰る場所』(11)のロックスター。彼らは人を寄せつけず、まるで固まってしまったかのように単調な日々を過ごしているが、予期せぬ出会いや家族の死をきっかけに心が動き、内なる旅を通して自分が何者なのかを発見していく。ソレンティーノは、そんな旅をシュールな映像と変化に富む音楽で鮮やかに表現してきた。

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『グレート・ビューティー/追憶のローマ』 劇場用パンフレット



News

永遠と喪失の狭間で

2014年8月23日(土)よりBunkamura ル・シネマほか全国ロードショーになるパオロ・ソレンティーノ監督の新作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』の劇場用パンフレットに、上記のようなタイトルで作品評を書いています。第86回アカデミー賞で最優秀外国語映画賞に輝いた作品です。主演は、ソレンティーノ監督と4度目のコラボレーションになる名優トニ・セルヴィッロ。

ローマという舞台、“俗物の王”を目指しながら虚しさにとらわれる主人公ジェップのキャラクターなどから、ソレンティーノとセルヴィッロのコラボレーションをフェリーニとマストロヤンニのそれに重ねてみる向きもあるかと思いますが、筆者はそういうところはあまり意識しないほうがよいかと思います。というよりも個人的には、そうしたことを意識する以前に独自の世界に引き込まれていました。

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『きっと ここが帰る場所』 『ブラック・ブレッド』 『星の旅人たち』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『きっと ここが帰る場所』 パオロ・ソレンティーノ

注目のイタリア人監督パオロ・ソレンティーノ(『愛の果てへの旅』『イル・ディーヴォ』)がショーン・ペンと組んで作り上げた新作。隠遁生活を送りながらもゴスメイクを欠かさないかつてのロックスター、シャイアン(ショーン・ペン)が、父親の死をきっかけにナチスの戦犯を追いかけるというようなストーリーを書いても、なんのことだかわからないだろうし、この映画の独特の世界は伝わらないだろう。

非常にユニークな感性と緻密な計算によって構築された世界は、どのようなところに反応するかによって印象も変わってくるはずだ。筆者はハル・ハートリーとかウェス・アンダーソンをちょっと連想したりしたが、それよりもここでは音楽のことに触れておきたい。

といっても、デイヴィッド・バーンやトーキング・ヘッズの曲<This Must Be the Place>のことではない。確かに、映画のタイトルもそこからとられ、劇中でもバーンがプレイしているのでこの曲はいちばん目立つ。しかし他にも個人的にやたらと印象に残る音楽が使われているのだ。

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