『灼熱の魂』劇場用パンフレット



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カナダの異才ドゥニ・ヴィルヌーヴの独自の話術と世界に迫る

カナダのアカデミー賞であるジニー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞など主要8部門を独占し、米国アカデミー賞の最優秀外国語映画賞にノミネートされた傑作『灼熱の魂』。この映画の劇場用パンフレットに「物語の力――偶然と必然の鮮やかな反転」というタイトルで作品評を書いています。

これを読めばどうしてももう一度観たくなる。そういう原稿になっていると思います。劇場で作品をご覧になりましたらぜひパンフもチェックしてみてください。

ベント・ハーメル 『クリスマスのその夜に』 レビュー



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人生の様々な局面をくぐり抜け、新たな生命の誕生が祝福される

『キッチン・ストーリー』や『酔いどれ詩人になるまえに』のベント・ハーメル監督の新作は、ノルウェーの人気作家レヴィ・ヘンリクセンの短編集の映画化だ。『クリスマスのその夜に』では、クリスマス・イヴを迎えたノルウェーの田舎町を舞台に、複数の登場人物の複数の物語が交差しながら展開していく。

結婚生活が破綻し、妻に家を追い出されたパウルは、サンタクロースに変装して、妻と新しい恋人と子供たちがイヴを過ごすかつての我が家に忍び込み、なんとか子供たちにプレゼントを渡そうとする。

なぜか一人で町をうろつく少年トマスは、上級生の少女ビントゥに声をかけられる。イスラム教徒だからクリスマスを祝わないというビントゥに、トマスも「うちもサンタを信じていない」と小さな嘘をつき、彼女の家に立ち寄ることになる。

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河瀨直美 『朱花の月』 レビュー



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万葉の精神と響き合い、純粋な「瞬間」に目覚めていくヒロイン

河瀨直美監督の『朱花の月』の舞台は、大和三山や藤原宮跡があり、古代の記憶が宿る飛鳥地方だ。この映画には、その記憶の断片ともいえる万葉集の歌が挿入される。

大和三山を男女に見立てた中大兄皇子の歌は、こんな意味になる。「香具山は畝傍山が愛おしい/奪われたくないから耳成山と争う/遠い昔もそうだった/そして今の世でも争うのだ」

この映画のヒロインは、万葉集に出てくる朱花(はねづ)の色に魅せられた染色家の加夜子。これまで地元PR紙の編集者・哲也と長年一緒に暮らしてきた彼女は、かつての同級生で木工作家の拓未と再会し、いつしか愛し合うようになっていた。

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ペンエーグ・ラッタナルアーン監督に取材



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因果応報や贖罪をテーマにした異色のフィルム・ノワール

東京国際映画祭のコンペ作品『ヘッドショット』のペンエーグ・ラッタナルアーン監督にインタビューしてきました。今回はオリジナル脚本ではなく、Win Lyovarinの小説“Rain Falling Up the Sky”の映画化。原作や原作者(監督の友人だそうだ)のこと、『シックスティナイン』や『わすれな歌』の時期、『地球で最後のふたり』や『インビジブル・ウェーブ』の時期からのスタイルの変化、カルマや贖罪というテーマなど、いろいろお聞きしてきました。

オフィシャル・インタビューなのでTIFFのサイトでご覧になれます。現在と過去が複雑に入り組むフィルム・ノワール。インタビューは以下のリンクからどうぞ。

【公式インタビュー】コンペティション 『ヘッドショット』

↓こちらは『ヘッドショット』のスタッフ、キャストの記者会見の模様。

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『ヘッドショット』 『アルバート・ノッブス』 『運命の死化粧師』 試写

試写室日記

22日から始まるTIFF(東京国際映画祭)の上映作品を3本。

『ヘッドショット』 ペンエーグ・ラッタナルアーン

『地球で最後のふたり』や『インビジブル・ウェーブ』のラッタナルアーン監督作品。主人公の過去と現在、記憶と真実が複雑に入り組むノワール。

タイ・バンコクのヒットマン、トゥルは任務遂行中に頭を撃たれる。昏睡状態から目覚めた彼には世界が逆さまに見える。逆さまなのは世界なのか彼なのか。

ラッタナルアーンは、様々にスタイルを変えながら「因果応報」や「贖罪」というテーマを掘り下げてきたが、それは確かにこの作品にも引き継がれている。独自のハードボイルドな美学が際立っている。

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