マッテオ・ガッローネ 『ゴモラ』 レビュー

Review

カモッラの実態に迫ることは、イタリアとはなにかを問うことでもある

2008年にカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得したマッテオ・ガッローネ監督の『ゴモラ』では、イタリア南部ナポリを拠点に絶大な権力を振るう犯罪組織“カモッラ”の世界が描き出される。彼らの支配は麻薬取引や武器密輸からファッションブランドの縫製や産業廃棄物の処理事業にまで及び、組織に従わない者は冷酷に排除されていく。

映画の原作である『死都ゴモラ』の著者ロベルト・サヴィアーノは、自らカモッラに潜入し、その実態を明らかにしてみせた。それだけにこの映画にはドキュメンタリーのようにリアルな空気が漂っているが、魅力はそれだけではない。

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今週末公開オススメ映画リスト2011/10/27

週刊オススメ映画リスト

今回は『フェア・ゲーム』、『ウィンターズ・ボーン』、『ゴモラ』の3本です。

『フェア・ゲーム』 ダグ・リーマン

イラク戦争に前後する時期には、アメリカ政府やCIAのなかで信じがたいことがいろいろと起こっていた。フセイン政権は開戦前に裏ルートを通じて大量破壊兵器を保有していないことをアメリカに伝えようとしたが、アメリカはバグダードで会おうと、これを突っぱねた。

どうしても戦争がしたいアメリカが飛びついたのは、国外追放処分を受けたイラク人で、“カーブボール”という暗号名を持つ人物の極めて信憑性が薄い大量破壊兵器の情報だった。

バグダード陥落後、故郷で米軍に拘束された大統領補佐官アル・ティクリティは、イラクに大量破壊兵器などなく、とうの昔にすべて破棄されたと告げたが、兵器を探し出すというブッシュ政権の目標が変わることはなかった。

実はCIAは、このアル・ティクリティが告げた事実を開戦前につかんでいた。ところが、政府やCIAの上層部から圧力がかかる。『フェア・ゲーム』では、そこから起こった事件が描き出される。

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『ゴモラ』のすすめ+ロベルト・サヴィアーノ

News

イタリアの歴史と結びついた“カモッラ”の軌跡を頭に入れて

ただいま発売中の「CDジャーナル」2011年10月号の映画レビューのページで筆者が取り上げているのは、マッテオ・ガッローネ監督のイタリア映画『ゴモラ』(第61回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、第21回ヨーロッパ映画賞5部門[作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞]受賞)。ナポリを拠点にする巨大な犯罪組織“カモッラ”の実態をリアルに描き出した作品だが、そのレビューを補足するようなことを書いておきたい。

この映画の原作は、作家/ジャーナリストのロベルト・サヴィアーノが自らカモッラに潜入して書き上げたノンフィクション・ノヴェル『死都ゴモラ』だ。映画はこの原作から5つのエピソードを選び出し、脚色し、絡み合わせていく。そのためカモッラのいまが浮き彫りにされるが、レビューではあえてその背景に注目している。

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