今週末公開オススメ映画リスト2013/03/14
- 2013年03月14日
- 映画, 週刊オススメ映画リスト
- アイルランド, アメリカ, アンドレア・セグレ, アンドレア・ライズブロー, イギリス, イタリア, ウォシャウスキー姉弟, クリスティアン・ムンジウ, グローバリゼーション, ジェンダー, ジェームズ・マーシュ, チャオ・タオ, デンマーク, トマス・ヴィンターベア, トム・ティクヴァ, ホモソーシャル, ルーマニア, 女性, 宗教, 実話, 死, 狩猟, 自然, 風景
今回は『汚れなき祈り』『偽りなき者』『ある海辺の詩人―小さなヴェニスで―』『シャドー・ダンサー』『クラウド・アトラス』の5本です。非常に見応えがあって、奥の深い作品が並んでいます。
おまけとして『ひまわりと子犬の7日間』のコメントをつけました。
『汚れなき祈り』 クリスティアン・ムンジウ
2005年にルーマニアで実際に起こった「悪魔憑き事件」に基づいた作品ですが、決してその忠実な再現というわけではなく、ムンジウ監督の独自の視点がしっかりと埋め込まれています。
『汚れなき祈り』試写室日記でも書きましたが、この監督の素晴らしいところは、まずなによりも、限られた登場人物と舞台を通して、社会全体を描き出せるところにあると思います。カンヌでパルムドールに輝いた前作『4ヶ月、3週と2日』(07)では、チャウシェスク独裁時代の社会が、本作では冷戦以後の現代ルーマニア社会が浮かび上がってきます。
その前作がふたりの女子大生と闇医者、本作がふたりの若い修道女と神父というように、時代背景がまったく異なるのに、共通する男女の三角形を軸に物語が展開するのは決して偶然ではありません。ムンジウ監督が鋭い洞察によってこの三角形の力関係を掘り下げていくとき、闇医者や神父に権力をもたらし、若い女性たちから自由を奪う社会が炙り出されるということです。
この『汚れなき祈り』の劇場用パンフレットに、「社会を炙りだすムンジウの視線」というタイトルで、長めのコラムを書かせていただきました。自分でいうのもなんですが、なかなか読み応えのある内容になっているかと思います。劇場で作品をご覧になられましたら、ぜひパンフもチェックしてみてください。