ドゥニ・ヴィルヌーヴ 『プリズナーズ』 レビュー

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過去や罪に囚われた者たちの運命を分ける、偶然と信仰心

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』は、ペンシルヴェニア州で工務店を営むケラーとその息子が鹿を狩る場面から始まる。親子が狩猟を終え、獲物を車の荷台に載せて自宅に向かっているとき、ケラーは父親から教えられたことを息子に伝える。それは「常に備えよ」という言葉に集約される。実際、自宅の地下室には、食料から防毒マスクまでサバイバルに必要なあらゆるものが備えられている。私たちは、ケラーの父親というのは、非常に用心深く、何事にも動じない人物だったのだろうと思う。

ところが、ドラマのなかでそんな印象が変わる。ケラーの行動に不審を抱いた刑事のロキは、古い新聞記事から、州刑務所の看守を務めていた彼の父親が自宅で自殺したことを知る。その事情は定かではないが、当時ティーンエイジャーだったケラーが立ち直れないほどのショックを受けたことは間違いない。

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テイト・テイラー 『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』 レビュー

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ユーモアを織り交ぜて描き出される女性同士のホモソーシャルな連帯関係

『ハッスル&フロウ』(05)や『ブラック・スネーク・モーン』(06)などの作品で知られるクレイグ・ブリュワー監督は、メンフィスに暮らし、メンフィスで映画を撮る自身の活動を、“リージョナル・フィルムメイキング”、地域に密着した映画作りと位置づけていた。

『フローズン・リバー』(08)で注目を集めたコートニー・ハント監督は、メンフィス出身で、現在は東部を拠点に活動しているが、その感性は生まれ育った土地と深く結びついている。彼女はこれまでの短編や長編をすべてニューヨーク州のアップステイトで撮影してきたが、それは風景がテネシーの故郷に非常によく似ているからだった(コートニー・ハント・インタビュー参照)。

小説家やミュージシャンと同じように、南部出身の映像作家は、土地に特別な愛着を持ち、土地に深く根ざした世界を切り拓く傾向がある。ミシシッピ州ジャクソン出身のテイト・テイラー監督にとって『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』は、リージョナル・フィルムメイキングを始めるきっかけになった作品といえる。

彼はこれまで15年以上もニューヨークやロサンゼルスを拠点に活動してきたが、この作品をミシシッピで撮ったことが転機となって故郷に戻ってきた。そして、かつてのプランテーションを購入し、そこを拠点に新人の育成にも乗り出そうとしているという。

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『おとなのけんか』 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』試写

試写室日記

本日は試写を2本。

『おとなのけんか』 ロマン・ポランスキー

フランスの劇作家ヤスミナ・レザの戯曲「God of Carnage」(日本上演タイトル「大人は、かく戦えり」)の映画化。息子同士の喧嘩に始末をつけるためにアパートの一室に集まった二組の夫婦。なごやかな雰囲気のなかで和解にいたると思いきや、ささいな出来事がきっかけで次々と本音が飛び出し、壮絶な舌戦へと発展していく。

ニューヨークのブルックリンを舞台にしているということだけで、そこにポランスキーが含みを持たせているように思えて、にんまりさせられる。

ポランスキーは30年前の淫行事件があるためアメリカに入国できない。だから舞台がアメリカに設定されていてもアメリカでは撮っていない、というのは前作の『ゴーストライター』も同じだが、今回の題材はちょっと事情が違う。

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