ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ 『少年と自転車』 レビュー

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必死にしがみつく少年、誘惑の森、そして媒介としての自転車

カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したダルデンヌ兄弟の新作『少年と自転車』(11)では、児童養護施設で暮らす少年シリルと美容院を経営するサマンサとの交流が描かれる。

間もなく12歳になるシリルは、彼を施設に預けた父親とまたいっしょに暮らすことを夢見ていたが、団地に戻ってみると父親はなにも告げずに転居していた。そのときサマンサと出会い、親切にされた彼は、週末を彼女の家で過ごすようになる。

シリルはその週末を使って父親を探し当てるが、戸惑う父親から突き放されてしまう。それを目の当たりにしたサマンサは、真剣にシリルの面倒をみるようになる。だが、かつて同じ施設にいた不良少年ウェスが、彼を巧みに丸め込み、利用しようとする。

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今週末公開オススメ映画リスト2012/03/22

週刊オススメ映画リスト

今回は『マリリン 7日間の恋』と『テイク・シェルター』の2本です。

『マリリン 7日間の恋』 サイモン・カーティス

『マリリン 7日間の恋』の物語は、後にドキュメンタリーの監督として名を残すコリン・クラークが書いた二冊の回顧録がもとになっている。筆者はどちらも読んでいないが、プレスによれば、一作目の『The prince, the Showgirl, and Me』では、『王子と踊り子』の第3助監督を務めたクラークの目に映ったモンローとローレンス・オリヴィエという二人の世界の軋轢が主に描き出され(40年前の出来事だが、クラークは撮影中、毎晩日記をつけていた)、二作目の『My Week with Marilyn』では、クラーク自身がマリリンとイギリス郊外を旅した一週間の出来事が記されているという。

この映画の成功の要因には、二冊の回顧録を巧みに組み合わせた脚本を挙げてもよいだろう。その結果として、映画の撮影現場が険悪な空気に包まれ、修羅場と化していくのに対して、その外でまるで映画のようなロマンスが芽生えていくという皮肉でめりはりのある物語が生まれた。

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ジェフ・ニコルズ 『テイク・シェルター』 レビュー

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“不安の時代”を象徴的かつリアルに浮き彫りにした出色の心理スリラー

リーマン・ショックから異常気象による災害まで、いまの世の中には日常がいつ崩壊するかわからないような不安が渦巻いている。アメリカの新鋭ジェフ・ニコルズ監督の『テイク・シェルター』では、鋭い洞察と緻密な構成によってそんな平穏に見える日常に潜む不安が掘り下げられていく。

掘削会社の土木技師であるカーティスは、妻のサマンサと聴覚に障害のある娘ハンナと、温かい家庭を築いていた。ところが、あるときから幻覚や幻聴、悪夢に悩まされるようになる。

迫りくる巨大な竜巻、茶色っぽくて粘り気のある雨、空を覆う黒い鳥の大群、突然牙をむく愛犬、凶暴化する住人など、あまりにもリアルなヴィジョンが彼の現実を確実に侵食していく。やがて彼は、避難用シェルターを作ることに没頭しだす。

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『私が、生きる肌』 『捜査官X』 『ミッドナイトFM』 試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『私が、生きる肌』 ペドロ・アルモドバル

『抱擁のかけら』(09)につづくアルモドバルの新作。『セクシリア』(82)でデビューし、初期アルモドバル作品の常連だったアントニオ・バンデラスが『アタメ』(89)以来、久しぶりに出演しているのもみどころ。

アルモドバルが好む状況や表現がこれでもかといわんばかりに詰め込まれ、濃密な空間を作り上げているが、まずはなんといっても“肌”に対するアプローチが素晴しい。本来なら肌の問題だけではすまない状況でありながら、それを「自己と他者を隔てる境界」としての肌に実に巧みに引き寄せ、独自の世界を切り拓いている。詳しいことはいずれまた。

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『裏切りのサーカス』 『ファウスト』 試写

試写室日記

本日は試写を2本。まったく異なる意味でどちらも重量級といえる作品で、非常に見応えがあった。

『裏切りのサーカス』 トーマス・アルフレッドソン

スパイ小説の大御所ジョン・ル・カレが74年に発表した『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化。東西冷戦がつづく1970年代前半、英国諜報部<サーカス>上層部に潜むソ連の二重スパイ“もぐら”の正体をめぐって、<サーカス>と<KGB>の熾烈な情報戦が繰り広げられる。

本物のスパイは、銃撃戦やカーチェイスなどを繰り広げたりせず、人ごみに紛れ、物影にひそみ、緊張や孤独に耐え、静かに神経をすり減らしていく。「007」のように、舞台や人物がエキゾティシズムを漂わせることもない。

“もぐら”の正体を暴くという極秘任務を託されたジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマンの抑えた演技が実に渋い)を中心に、登場人物たちが複雑に入り組むため、公式サイトに「必読」のコーナーが準備され、鑑賞前に最低限の設定を頭に入れていくことを勧めている。

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