デイヴィッド・フィンチャー 『ソーシャル・ネットワーク』 レビュー



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人間はネットワークを構成するノード(結節点)である

『ゲーム』に登場する実業家は、死の瀬戸際まで追い詰められるリアルな〝ゲーム〟を体験することでトラウマから解放される。『ファイト・クラブ』のヤッピーは危険な妄想と暴力のなかで生を実感し、彼を呪縛する消費社会に攻撃を仕掛ける。

『ゾディアック』の風刺漫画家は警察やマスコミを翻弄する殺人犯にとり憑かれ、人生を狂わせていく。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』では、老人として生まれ、若返っていく男の目を通して世界が描き出される。

デイヴィッド・フィンチャーが強い関心を持っているのは人間の内面であり、内面を通して見える世界だ。そんな彼にとって、世界最大のSNS“フェイスブック”の創設者マーク・ザッカーバーグは格好の題材といえる。この天才ハッカーのヴィジョンでは、人間はネットワークを構成するノード(結節点)だったからだ。

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トマス・ヴィンターベア 『光のほうへ』レビュー



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機能不全家族から生まれる負の連鎖を断ち切るために…

トマス・ヴィンターベアの新作『光のほうへ』は、デンマークの若手作家ヨナス・T・ベングトソンの小説『サブマリーノ 夭折の絆』(ACクリエイト刊、2011年5月31日)の映画化だ。

舞台はデンマークのコペンハーゲン。プロローグでは、主人公兄弟の少年時代の体験が描かれる。アルコール依存症の母親と暮らす兄弟は、育児放棄している母親に代わって年の離れた弟の面倒を見ているが、その弟はあまりにもあっけなく死んでしまう。

そして、大人になった兄弟それぞれの物語が綴られていく。彼らはいつからか別々の人生を歩むようになったらしい。兄は人付き合いを避けるように臨時宿泊施設に暮らし、怒りや苛立ちを酒で紛らしている。弟は男手ひとつで息子を育てているが、麻薬を断ち切ることができない。そんな兄弟は母親の死をきっかけに再会し、心を通わせようとするが…。

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クラウディア・リョサ 『悲しみのミルク』レビュー



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母親の世界を生きてきたヒロインが自己に目覚め、現実に踏み出すとき

マリオ・バルガス=リョサの姪にあたるクラウディア・リョサ監督の『悲しみのミルク』は、ベッドに横たわる老女が過去の悲痛な体験を歌で物語るところから始まる。彼女はペルーにテロの嵐が吹き荒れる時代に、極左ゲリラ組織に夫の命を奪われ、辱めを受けた。そして、母親の歌にこの映画のヒロインである娘のファウスタがやはり歌でこたえる。だが間もなく母親は息絶えてしまう。

この冒頭の場面は、ヒロインの立場や彼女がどんな世界を生きているのかを暗示している。ファウスタと彼女が厄介になっているおじの一家は、母親が体験した苦しみが母乳を通じて子供に伝わるという“恐乳病”を信じている。母親が心と身体に深い傷を負ったとき、彼女は娘を身ごもっていた。

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イエジー・スコリモフスキー監督に会う



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新作『エッセンシャル・キリング』が公開(今夏、渋谷シアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開)されるイエジー・スコリモフスキ監督にインタビューしてきました。

試写室日記に書いたように、『エッセンシャル・キリング』では自然や動物性が印象に残りますが、それは監督が人里離れた自然のなかで、日常的に野生の動物と遭遇するような生活を送っていることが大きいようです。

インタビューは7月売りの「CDジャーナル」に掲載される予定です。

映画から読み解くアメリカ激動のゼロ年代――『ダークナイト』 『シリアナ』 『扉をたたく人』

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9・11以降の変容と矛盾を斬新な視点で浮き彫りに

9・11同時多発テロやイラク戦争、リーマン・ショック、オバマ大統領の誕生など、アメリカのゼロ年代(2000年~09年)は激動の時代だった。そんな事件や社会情勢の変化は同時代のアメリカ映画にも大きな影響を及ぼした。なかでも特に映画人の想像力を刺激したのが「テロとの戦い」だったのではないだろうか。このテーマを斬新な視点と表現で掘り下げ、アメリカが抱える矛盾を浮き彫りにした作品が強い印象を残しているからだ。

「バットマン」シリーズの一本であるクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(08)では、ヒーローの矛盾を通してアメリカの矛盾が描き出される。バットマンという法に縛られないヒーローが必要とされるのは、悪がはびこり、法の番人では歯が立たないからだ。しかしこの映画では、ヒーローと悪の関係がねじれていく。

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