『エッセンシャル・キリング』試写

試写室日記

本日は試写を1本。

『エッセンシャル・キリング』 イエジー・スコリモフスキ

『アンナと過ごした4日間』で見事な復活を遂げたポーランドの巨匠スコリモフスキの新作。主演はヴィンセント・ギャロ。ヴェネチア国際映画祭で、審査員特別賞と主演男優賞を獲得している。

作品の構造は、ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロウ』を想起させる。『ダウン・バイ・ロウ』では、一部のニューオーリンズから二部の刑務所、そして三部の脱獄後の空間へと、情報や記号が消し去られていき、主人公たちは時代も場所も定かではないどこでもない場所へと彷徨いだす。

スコリモフスキはそれを9・11以後の世界でやってしまう。アフガニスタンから始まり、捕虜として収容所に連行され、逃亡の先にはどこでもない場所が広がる。

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『海洋天堂』 『アリス・クリードの失踪』 『いのちの子ども』試写

試写室日記

本日は試写を3本。

『海洋天堂』 シュエ・シャオルー

『北京ヴァイオリン』の脚本家として注目を集めたシュエ・シャオルーの監督デビュー作。撮影はウォン・カーワイ作品でおなじみのクリストファー・ドイル。主演はアクションを封印したジェット・リー。末期癌で余命いくばくもない父親が、ひとり残される自閉症の息子のために奔走する。

単に親子の絆を描くだけではなく、自閉症の息子という“他者”の世界が意識されている。この映画のなかでは、自閉症の世界は海の世界として表現される。父親が勤める水族館の水槽のなかを自由に泳ぎ、水中から父親を見る息子と、水槽のガラスを隔てて息子を見る父親。

その壁がどのように消し去られるのか。映画は海で始まり海で終わるが、その間に海が象徴するものが変わっていく。

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グザヴィエ・ボーヴォワ 『神々と男たち』レビュー



Review

「人間」と「神々」のあいだ

■■修道士たちはなぜアルジェリアに残ったか■■

1990年代のアルジェリア。人里離れた村にある修道院でカトリックのフランス人修道士たちが、厳格な戒律に従い禁欲的な生活を送っている。彼らは礼拝を行い、畑を耕し、イスラム教徒の住民と親交を深め、弱者や貧者に奉仕する。だが、吹き荒れる内戦の嵐はこの辺境の地にも押し寄せ、非イスラム教徒の外国人が標的となり、命を奪われていく。そこで修道士たちは土地を去るか残るかの選択を迫られる。

グザヴィエ・ボーヴォワ監督の『神々と男たち』は、1996年にアルジェリアで起きたGIA(武装イスラム集団)によるとされるフランス人修道士誘拐・殺害事件を題材にしている。この事件は未だに不明な点が多く、謎が残されている。事件の背景には、アルジェリアと旧宗主国フランス、政治とイスラムの関係などが複雑に絡み合っている。

だが、この事件に最初に注目し、草稿を書いたエティエンヌ・コマールと監督のボーヴォワは、事件の真相に迫ろうとしているわけではないし、事件を通して背景を炙り出そうとしているわけでもない。彼らの関心は、内戦が激化するなかでなぜ修道士たちがアルジェリアに残る決心をしたのかに絞り込まれている。

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『ソフィアの夜明け』 DVD



News

東京国際映画祭で3冠(東京サクラグランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞)に輝き、昨年劇場公開されたカメン・カレフ監督のブルガリア映画『ソフィアの夜明け』。この作品のDVDが5月28日に発売されます。

筆者が劇場用パンフレットに書いた作品評が、DVDの特典の封入冊子にも収録されております。心が震える素晴らしい映画ですので、まだご覧になってない方はぜひ。

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『’Round Midnight (Homage to Thelonious Monk)』 by Emanuele Arciuli



Listning

20の<Round Midnight>と、ひとつの<Round Midnight>

ジャズ史のなかで異彩を放つ唯一無二のピアニスト、セロニアス・モンク。これまで様々なミュージシャンたちが、モンクのトリビュート作品を発表してきたが、Emanuele Arciuliの『’Round Midnight (Homage to Thelonious Monk)』は、そのどれとも似ていない。まったく異色の作品といえる。

Emanuele Arciuliは、イタリアのクラシックのピアニストだ。トリビュート作品では当然、モンクの生み出した様々な楽曲が取り上げられるはずだが、このアルバムでは、モンクの代表曲にしてスタンダード・ナンバーになっている<Round Midnight>だけだ。

round midnight

'Round Midnight (Homage to Thelonious Monk)

Arciuliは、これまで一緒に仕事をしてきたアメリカとヨーロッパの作曲家たちに協力を求め、それぞれの作曲家が<Round Midnight>の同じテーマの変奏を試みた。

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